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第236号 民法 第176条物権の設定及び移転)補足

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毎日3分!条文+豆知識で民法完全制覇! 第236号 2007・1・17
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■■ はじめに ■■

みなさん、こんばんわ。

今日は、いつもとは少し異なる感じでやりたいと思います。

というのも、ある読者の方から、質問がありましたので、それを解説したいと思います。

民法176条に関しての質問ですので、バックナンバーの民法176条の部分を確認してから今日の解説は読んでください。

おそくらく同じような疑問をお持ちの方がいらっしゃると思いますので、番外編ということで発行することにしました。

ただ、ちょっと難しいので、わからなくてもあまり気にしなくてもかまいません。

↓バックナンバーは、こちらのページで確認してください。

https://www.mainiti3-back.com/archives/2006/03/post_152.html

それでは、はじめていきましょう!!

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▼▼▼ 民法 第176条  (物権の設定及び移転) ▼▼▼

物権の設定及び移転は、当事者の意思表示にのみによって、その効力を生ずる。

■■ 解説 ■■

ここからは、バックナンバーを読んでいただいていることを前提に解説します。

わが国の民法は意思主義を採用しています。

つまり、物権変動が生じるためには、意思表示だけで足ります。

とすると、なぜ二重譲渡できるのか?という疑問が出てくると思います。

甲さんが、乙さんに土地を売りました。

その後、さらに甲さんは、丙さんにも土地を売りました。

この場合、意思主義からすると、乙さんに売った時点で、甲さんは土地に関しては無権利者になってしまうわけですから、さらに丙さんにも売るなどということはできないはずです。

無権利者である甲さんから、土地を買った丙さんも当然無権利者ですから、土地を取得できることはないとも思えます。

しかし、民法177条は、丙さんも登記をすれば、乙さんに対抗することができると規定しています。

要するに、第2譲受人の丙さんも登記をすれば、完全に権利を取得することができるということです。

となると、176条と177条は、矛盾しているようにも思えます。

これをどう説明するかが問題となります。

この点については、大きく分けて2つの説が対立しています。

一つ目は、おそらくこれが通説だと思うのですが、不完全物権変動説というものです。

二つ目は、有力説で公信力説というものです。

不完全物権変動説が通説ですので、そちらだけ理解していただければ十分です。

ただ、一応、両方解説しようと思います。

まず、不完全物権変動説からです。

不完全物権変動説は、確かに意思表示だけで物権変動は生じるけれども、登記を具備しない限りは、完全に排他性のある物権を取得することはできないと考えます。

ですから、甲が乙に土地を売って、乙が未だ登記を具備していない間は、乙が取得した権利は、不完全な権利だということになります。

つまり、甲さんも完全に無権利者となるわけではないと考えるわけです。

残りのカスみたいな部分が甲さんにもまだ残っているというイメージです。

その自分の下に残っている不完全な権利をさらに、丙さんにも譲渡することができると考えるわけです。

甲さんが、乙さんに売り渡した。

さらに、甲さんが、丙さんにも売り渡した。

この段階では、甲さんも、乙さんも、丙さんも全員が、不完全ながら権利者であるというわけです。

そして、その後誰かが登記をした時点で、その者が完全な権利者となり、それ以外の者は完全な無権利者となるわけです。

まぁ、一応の説明にはなっていると思いますが、当然、批判もあります。

この批判は、だいたい予想がつきますよね。

「不完全な物権変動って何?」「不完全な権利って何?」ということになります。

そのようなよくわからない曖昧な概念を使うべきではないと批判されています。

そこで、登場したのが、公信力説です。

公信力説は、甲さんが乙さんに土地を売った時点で、甲さんは完全な無権利者となると考えます。

にもかかわらず、甲さんからさらに譲り受けた丙さんも権利を取得できるのは、甲さんの所有者らしい概観を真実と信じて取引に入った丙さんを保護すべきだからだ、と説明します。

つまり、動産に認められている即時取得(民法192条)のようなことを不動産にも認めてしまおうという考え方です。

民法192条の即時取得はこちらで確認してください。↓

https://www.mainiti3-back.com/archives/2006/05/post_170.html

これは登記に公信力を認めることになるので、公信力説と言われています。

ただ、もちろんこれにも批判があります。

192条が動産についてのみ規定している以上は、不動産についてそのような扱いをするのは妥当でない、と批判されています。

いずれにせよ、このような説明がなされているということだけ知っておけば十分です。

■■ 豆知識 ■■

今日は、豆知識は特にありません。

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■ 編集後記 ■

どうでしょう?

これが法律のおもしろさでもあり難しさでもあるのです。

法律という学問は、自然科学ではないと言われるのもこれが理由です。

たとえば、ロケットがどうすれば飛ぶのか?というのは自然科学です。

ロケットが飛ぶためには、どれくらいのスピードがあって、どの角度で打ち上げるかというのが、決まっています。

もし、スピードが足りなかったり、角度を間違えたりすると絶対にロケットは飛びません。

法律は、そうではないんですよね。

意思主義を採用すれば、本来であれば、二重譲渡はできないはずなんです。

しかし、何とか解釈して論理をつないで、二重譲渡はできるという説明をすることができるのです。

でも、自然科学の場合は、そんなことはできません。

スピードが足りなくて、角度を間違えれば、絶対に飛ばないんです。

解釈と論理によって結論を変えることができる。

これが、法律のおもしろさであり、難しさでもあります。

法律を勉強すると、論理力が飛躍的に高まります。

今、私の知り合いが、選挙の真っ最中なのですが、彼は、東大法学部を出ています。

立候補を決めたのが、3ヶ月くらい前で、街頭演説なんてまったくしたことなんてないのに、やっぱり演説がわかりやすい。

論理がすっきりしていて、矛盾なくスジが通っているからなんです。

私は、法律を勉強すれば、仕事や他のジャンルでも必ず役に立つと信じています。

がんばりましょう!!

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(裏編集後記)

今日は、番外編になりました。

読者のみなさまのご意見をできる限り取り入れていくつもりですので、ご希望や質問などがございましたら、お気軽にご連絡ください。

関連条文

第235号 民法 第298条 (留置権者による留置物の保管等)(20072222)

第234号 民法 第297条(留置権者による果実の収取)(20071818)

第233号 民法 第296条(不可分性)(20071818)

第231号 民法 第295条(留置権の内容)(20070404)

第230号 民法 第295条(留置権の内容)(20070404)

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