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第166号 民法 第192条 即時取得/善意取得

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毎日3分!条文+豆知識で民法完全制覇! 第166号 2006・5・25
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■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。

今日は、民法192条の解説です。今日の民法192条は、めちゃくちゃ大事な条文です。

今までにも何回か言葉は出てきたと思うのですが、即時取得に関する規定です。

即時取得という言葉は善意取得ともいうのですが、同じ意味です。まとめて覚えてしまってください。

今は、民法物権編の占有権の解説をしているのですが、この民法192条の即時取得はいろんな条文と絡んできますのでしっかりと理解してくださいね。

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▼▼▼ 民法 第192条 ▼▼▼ (即時取得/善意取得)

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

■■ 解説 ■■

さてどうでしょうか?おそらく条文を読んでも何を言っているのか全くわからないと思います。

いきなり具体例をあげて解説します。

Aさんは、Bさんからパソコンを借りていました。その後、Aさんは金がなくなったのでそのパソコンを売ってしまうことを思いつき、そのパソコンをCさんに売ってしまいCさんに引き渡しました。

その時、CさんはそのパソコンがAさんのものであると善意・無過失で信頼していました。

この場合、パソコンは誰のものになるのでしょう。

もちろん、真の所有者はBさんで、Aさんは借りているだけですので、パソコンを勝手に売ってしまう権利などありません。

結論をいうと、パソコンはCさんのものになります。つまり、パソコンの所有権は、Cさんが取得することになるのです。

これを善意取得といいます。

なぜ、こうなるのかを解説します。

法律は原則論が大事ですので、まずは原則論から考えます。

まず、パソコンの真の所有者はBさんです。Aさんは借りているだけで、パソコンの所有権はありませんので、勝手に売ることなどできません。

ですから、Aさんはパソコンに関しては単なる無権利者なのです。

とすると、その無権利者からパソコンを買ったCさんも所有権を取得できないのが原則ということになります。

これは当然ですよね。

しかし、Cさんから見るとどうでしょうか?Cさんは、そのパソコンがAさんのものだと信じて買ったのに、パソコンが自分のものにならないわけです。

Cさんはかわいそうですよね。

もし、こんなことばかりが起きるようだと、誰も相手を信頼して取引をすることができなくなります。

みなさんも想像してみてください。自分が買ったはずのものが実は自分の物ではなくて、いきなり真の所有者が出てきて返せ、と言われると困るでしょう。

こんなことだと誰も取引をしなくなり、経済が停滞してしまいます。

そこで、取引の安全を守るために無権利者と取引した人でも保護しましょうというのがこの即時取得の規定なのです。

ただ、もう一つ考えて欲しいのが、真の所有者であるBさんのことです。

Cさんが即時取得してしまうと、Bさんは自分の知らないところで、自分の物だったはずのパソコンの所有権を失ってしまうわけです。

今度は、Bさんがかわいそうですよね。

ですから、民法192条は、簡単には即時取得を認めずに、相手方が善意・無過失でその物を買った場合にのみ即時取得を認めているのです。

即時取得の成立に、かなり厳しい要件を課すことによって、真の所有者であるBさんと相手方を信頼して取引に入ったCさんのバランスを保っているのです。

あまりに簡単に即時取得を認めてしまうと真の所有者であるBさんがかわいそうですし、即時取得が全く認められないのでは、今度は、取引をしたCさんがかわいそうです。

その両者の調和を図っているのが、この民法192条の即時取得です。

■■ 豆知識 ■■

とりあえず、簡単に解説しましたが、即時取得が成立するためには、他にも要件が必要です。

即時取得成立の要件を挙げておきます。

1、目的物が動産であること
2、前主が無権利者であること
3、前主に占有があること
4、前主との間に有効な取引行為があること
5、平穏・公然・善意・無過失で占有を取得すること

この要件が全部そろった場合に、はじめて即時取得が成立します。

まず、1ですが、即時取得が成立するのは動産に限られています。つまり、不動産については、即時取得は成立しません

これは、いくら取引の安全を守る必要があるといっても、真の所有者がいきなり不動産の所有権を失うというのは、あまりにも酷だからです。

動産の場合には、比較的価値が低いものが多いので、真の所有者を犠牲にしてでも取引の安全を守る必要がありますが、さすがに不動産となると、それはかわいそうだろうということです。

ただ、不動産の場合、即時取得と似たような結果となる94条2項類推適用という話があります。

これは難しいので、また機会があれば解説します。

次に、少し細かいのですが、4の有効な取引行為があること、という要件です。

つまり、取引行為自体に瑕疵がある場合は、即時取得は成立しません。例えば、無権代理などのような場合です。

即時取得は、取引行為の瑕疵を治癒する制度ではないのです。

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■ 編集後記 ■

どうでしょうか?即時取得はだいたい理解していただけたでしょうか?

豆知識の部分はかなり細かいのですが、法律系の資格試験などには出題されますので、そういう方はしっかりと勉強してみてください。

とりあえず、即時取得というのがどういうものなのかということを知るだけれあれば、豆知識の部分はとりあえず置いておいてもいいと思います。

まずは、即時取得というのがどういう制度なのかということを理解してもられればいいと思います。

自分の財産は、自分で守る。これはほんとうに大事です。村上ファンドじゃないですけど、勉強不足な人は、賢い人に食い物にされる危険があります。

頑張って一緒に勉強していきましょうね

それでは、次回もお楽しみに!!

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(裏編集後記)

だいぶ暖かくなってきました。こんな季節は、どこかに遊びにいきたくなりますね。

バーベキューとかをやりたい季節です。

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