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第72号 民法第94条 虚偽表示の解説

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毎日3分!条文+豆知識で民法完全制覇! 第72号 2005・10・5
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■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。

昨日の解説はどうでしょう。理解できましたでしょうか。

今日も、かなりやっかいな条文です。

民法94条の解説なのですが、この条文はめちゃくちゃ重要なんです

94条2項類推適用というすごく有名であり、かつ、難しい論点が絡むのです。

本来、この条文が適用される場面ではないけど、似ているよね。

という場合に、類推適用というテクニックを使うことがよくあるのです。これが、法律の難しさです。

例えば、理系の難しいといわれている物理学を考えてみてください。物理学に類推適用なんてあり得ないですよね。

あるスピードと角度で大気圏に突入すれば、無事に地球に戻ってくることができる。

それが、ズレてしまえば、アウトなわけです。

少し角度がズレてたけど、おしかったから、無事に帰ってこれた。ということは、あり得ないわけです。

アウトかセーフかのどちらかしかないわけです。

しかし、法律の世界は、解釈が入ります。

例えば、ある事件で、本来この条文を使うことはできないとします。ということは、本来アウトになるわけです。

でも、似ているから、この条文を類推して適用しようということが法律の世界では、可能なのです。

つまり、アウトのものを解釈でセーフにすることもできるということです。

なぜなら、法律は、実社会の問題を解決するためのものだからです。まぁ、この話は難しいので少しずつわかってくると思います。

それから、類推適用に関しては、以前に、もう一つのメルマガである「知ってて得する法律知識!実際の判例から解説!」の方で、実際にあった事件を素材に解説しているのでそちらを参考にしてください。

このメルマガでは、省略させていただきます。

それから、大丈夫だとは思いますが、このメルマガに限らず、メルマガを読む時は、メールソフトの設定で、等幅フォントにしてくださいね。段落がズレて読みにくくなってしまいますので。

自分自身がそうだったので、一応注意ということで。メールソフトによって、設定は違うと思いますので、一度調べてみてください。

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▼▼▼ 第94条 ▼▼▼ (虚偽表示)

1項
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

2項
前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

■■ 解説 ■■

昨日に引き続き、この条文も読んだだけでは理解できないと思います。

まず、1項について説明します。

例えば、木村さんと加藤さんがいます。そして、木村さんは、家を持っていたとします。

この時に、木村さんと加藤さんの間で次のような会話がされました。

木村:「オレの家を、しばらくの間だけ、お前のものということにしといてくれない。」

加藤:「別にいいけど。じゃあ、登記をオレの名義にしようか。」

木村:「ありがとう。助かるよ。じゃあ、さっそく登記をお前の名義に移すよ。」

その後、木村さんの家は、加藤さんに売ったことにして、家の登記は、加藤さんの名義に移転されました。

このような場合、一応形としては、木村さんと加藤さんの間に売買契約が成立し、家の登記も加藤さんに移転しているので、家は加藤さんのものということになります。

でも、94条1項は、このような通謀してなされたウソの契約は無効としているのです。

そりゃそうですよね。お互い売る気もなければ、買う気もないんですから。

こんな契約を有効にする必要がありません。

ある意味では、当然のことを定めたのが94条1項です。

ここで、みなさんは疑問に思われると思います。

なぜ、木村と加藤は、そんなウソの契約をする必要があるんだと。バカかお前らは。

と思われたでしょう。

でも、実際こういうことはよくあるんです。

どういう時にこういう事が行われるかというと、例えば、木村さんが借金まみれになって今にも破産しそうだ、というような場合です。

もし、木村さんが破産した時に、自分の家を持っているとすると、当然差し押さえられて競売にかけられて、強制的に家を取られてしまうわけです。

でも、仮に加藤さんへの売買契約が有効となれば、家は加藤さんの物です。

つまり、木村さんの債権者は、家を差し押さえることができなくなるのです。

なぜなら、家は木村さんの物ではなく、加藤さんの物だからですね。

こういう借金から免れるために、仮装売買というのはよく利用されます

でも、こういう売買契約は94条1項で無効となります。つまり、家はいまだに、木村さんの物なので、債権者は家を差し押さえることができます。

ここまでが民法94条1項です。

ですが、ここで問題が発生します。

もし、さっきの事例で、加藤さんが、自分の名義の登記があることを悪用して、さらに、佐藤さんという人に売ったとします。この場合は、どうなるのでしょうか。

      売却       売却
木村さん  →  加藤さん  →  佐藤さん

もし、さきほどのように、94条1項で無効だということになれば、佐藤さんは、家を手に入れることができなくなります。

佐藤さんは、加藤さんが、登記を持っているからそれを信頼して買ったわけですよね。

通常、不動産を買うときは、必ずその不動産が誰の物なのか、登記を調べます。

そして、佐藤さんは、きちんと登記を調べて、名義が加藤さんになっていたから買ったわけです。

にもかかわらず、94条1項で無効になって、家を手に入れることができなくなるというのでは、あまりにも佐藤さんにかわいそうですよね。

誰が悪いといえば、ウソの契約をして、ウソの登記をした、木村さんですよね。

とすれば、木村さんより、佐藤さんを保護すべきということになります。

だってそうですよね。ウソの契約をするような人より、登記を信頼して家を買った人の方が保護すべきですよね。

そこで、94条2項は、このような佐藤さんのような人があらわれた場合には、佐藤さんが家を手に入れることができるということを規定しているのです。

このような佐藤さんのことを、法律の世界では「第三者」といいます。つまり、94条1項で、無効だけれども、その無効は佐藤さんのような第三者には対抗できませんよ、ということです。

無効を佐藤さんに対抗できない。すなわち、佐藤さんは無事に家を手に入れることができるということです。

この「対抗」という言葉も法律の世界独特の言葉なので、慣れてくださいね。「対抗できる。」とか「対抗できない。」という使い方をします。

それから、94条2項は、「善意の第三者には・・・」と書いてありますので、仮に、佐藤さんが、悪意の場合(木村さんと加藤さんの売買契約がウソだということを知っていた場合)には、無効を佐藤さんに対抗できるので、原則どおり無効ということになり、佐藤さんは家を手に入れることはできません。

これも当たり前の理由で、「知ってたんだったら、買うなよ。」ということになるからですね。

■■ 豆知識 ■■

さきほどの事例のように、登記を信頼して売買契約をしたような佐藤さんのような人を保護する94条2項のような規定は、他にもあります。

このような、ことを「取引安全の保護(動的安全の保護)」といいます。

反対に、94条1項のように、無効にして木村さんを保護することを「静的安全の保護」といいます。

この言葉もよく出てくるので、覚えておいてください。何となくイメージはつくと思います。

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■ 編集後記 ■

「取引の安全」「対抗」「善意」「第三者」など、わけのわからない言葉のオンパレードでしたが、少しずつ慣れていけばいいので、安心してくださいね。

わからないからといって、悩んで立ち止まる必要はありません。わからなくても、どんどん進むことが重要です。

先に進んで、ようやく前のことが分かってくるというのは、ほんとによくあることです。

あまり深く考えずに、どんどん先を読んでいってください。法律独特の言葉や言い回しになれることがまずは大事ですから。

それから、最初にもいいましたが、94条はこれだけでなく、もっともっと難しい話がたくさんあります。

しかし、全てを解説しているといつまでたっても終わらないので、これくらいにしておきます。

類推適用の話だけ、以前にもう一つのメルマガである「知ってて得する法律知識!実際の判例から解説!」で紹介しているので、そちらを参考にしてください。

それから、途中から、購読されている方は言葉の意味などもわからないと思うので、バックナンバーを公開していますので、そちらを暇な時に、こつこつ読んでいただければ理解しやすいと思います。

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