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第75号 第96条 詐欺又は強迫 Part2

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毎日3分!条文+豆知識で民法完全制覇! 第75号 2005・10・8
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■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。

今日は、民法96条の解説の続きを少しだけしたいと思います。

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▼▼▼ 第96条 ▼▼▼ (詐欺又は強迫)

1項
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

2項
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

3項
前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

■■ 解説 ■■

さて、昨日の続きを少しだけします。

2項についての説明ですが、みなさん考えていただいたでしょうか。

これも条文だけ読んでいても、理解するのは難しいので、具体例を使って説明したいと思います。

甲・乙・丙という3人が登場します。

甲さんは、1000万円の価値のある土地を持っていました。

その土地を乙さんに、「500万円で買わないか。」と持ちかけました。

当然、乙さんは、1000万円の価値のある土地を500万円で取得できるわけですから、これはおいしい話だという事で、「いいよ。買うよ。」と言いました。

この時点で、甲・乙間で本件土地の売買契約が成立しました。

しかし、甲さんがなぜ、1000万円の土地を500万円で売るなんて言ったのかというと、実は、丙さんが甲さんを騙していたんです。

丙さんは、甲さんに、こう言いました。

「甲さん、あなたの土地の近くに、産業廃棄物の処理場が来年建設されるから、来年には、あなたの土地は、半額以下になりますよ。」

これは、嘘なのですが、甲さんはすっかりだまされえ今のうちに売り抜けようと考えて乙さんに500万円で売るといったのです。

つまり、甲さんは、丙さんに詐欺をされたわけです。とすると、昨日の説明からすれば、96条1項で甲さんは、この契約を取り消せそうですよね。

でも、ちょっと待ってください。乙さんからすればどうでしょう。

確かに、乙さんが甲さ んを詐欺したのであれば、乙さんも取り消されても仕方ありません。なぜなら、自分が悪いんですから。

でも、この事例では、詐欺をしたのは丙さんです。すなわち、乙さんからすれば、自分とは全く関係のない所で、詐欺が行われて、甲さんは騙されていたわけです。

「そんなこと知るか!」

ということになります。ですから、96条2項は、丙さんのように、契約に関係ない第三者が詐欺をした場合は、相手方がその事実を知っていたときに限り、取り消すことができると規定しているのです。

反対に、乙さんが、甲さんは、丙さんに騙されているんだ、という事を知っていたとすれば、甲さんは取り消すことができます。

これが、96条2項です。

それから、もう一つだけ。

1項と3項をもう一度よく読んでください。

1項は「詐欺又は強迫」と書いてあります。そして、3項は、「詐欺による意思表示の取消しは・・・」と書いてあります。

あれ、3項には「強迫」が書いてないですよね。

これは、どういうことか。と思って欲しいんですね。

詐欺された場合でも、善意の第三者が登場していた時には、取り消すことができないということは昨日説明しましたよね。これが、96条3項です。

じゃあ、強迫の場合はどうなのでしょう。96条3項は、詐欺の場合にしか規定していません。

ということは、強迫の場合は、善意の第三者が登場しようが、96条1項の原則どおり、無条件に取消すことができるのです。

なぜなら、詐欺の場合は、詐欺されたということは、ちょっとは何かいい夢を見ようとしてたということですよね。

昨日の事例で言えば、新幹線が開通して、土地の値段が上がるからということで、儲かるかもしれないということで、土地を買ったわけです。

でも、強迫の場合は、どうでしょう。強迫の場合は、一方的に脅されたわけですから、強迫された人はかわいそうですよね。

ですから、強く保護する必要があるわけです。

そこで、96条3項は、強迫の場合をあえて規定せず、無条件に取消すことができることにしたのです。

強迫された場合は、どんどん土地が転売されても、無条件に取消して、土地を取り返すことができるのです。

この考え方を、反対解釈といいます。

どういうことかというと、96条には、「強迫の場合は、無条件に取消すことができる」なんて書いてないですよね。

「詐欺による、意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。」と書いてあるわけです。

つまり、詐欺の場合は、取消しを善意の第三者に対抗できないわけです。

強迫の場合は、何も書いてない。これを反対に考えると、強迫の場合は善意の第三者に対抗することができる、となるわけです。

反対解釈という技法は、法律の世界ではよく使うので、覚えておきましょうね。

■■ 豆知識 ■■

今日は特にありません。

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■ 編集後記 ■

この96条に関しては、もう一つ大事な論点があります。

それは、もう一つのメルマガである「知ってて得する法律知識!実際の判例から解説!」の方で紹介したいと思います。

それから、この論点を理解するためには、94条2項類推適用という考え方を分かっておくとすごく理解が早いと思います。

以前に、ある判例を素材に、94条2項類推適用を解説しており、そのバックナンバーを公開しているので、ぜひ、そちらを読んでおいてください。

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