第76号 2005・10・10

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。

今日は、76条の解説です。

93条、94条、95条、96条という一つの山場は超えましたが、今日も重要な条文です。

気を抜かずに、読んでくださいね。

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よろしくお願いします。

第97条(隔地者に対する意思表示)

1項
隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

2項
隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

■■ 解説 ■■

今日は、少しなじみの無い話になるかもしれません。

まず、契約というのは、申し込みと承諾によって成立します。

例えば、コンビニで、お茶を買うときのことを想像してみてください。

お茶を持ってレジに行きますよね。

その時に、「このお茶をください。」とは言いませんが、レジにお茶を置いた時点で、お茶を買うという申し込みをしたことになります。

そして、店員さんが、「ありがとうございます。」と言ってレジを打ちますよね。

これが、承諾になります。法律的に言うと、この時点で、お茶の売買契約が成立することになります。

コンビニの場合は、買う人と、売る人が目の前にいるわけですから、申し込みと承諾はほぼ同時になされますので、問題が起きることはあまりありません。

ですが、遠く離れた土地で、売買がされるということも時々あります。

例えば、北海道の土地を買おうと思って、北海道の不動産屋に手紙で、「あの土地を売ってください。」と書いて送ったとします。

この場合、申し込みがあったとされるのはいつの時点なのでしょう。

これが、問題になります。

そして、1項がそれを規定しています。

1項を見ると、「通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」と書いてあります。

つまり、手紙が相手方に到着した時に初めて、申し込みがあったということになります。

これを到達主義といいます。

反対に、手紙を出した時点で、申し込みがあったと考える立場もあります。

これを、発信主義といいます。

この到達主義と発信主義という考え方、どういう違いがあるのでしょう。

契約の申し込みというのは、一度すると勝手に撤回することはできないんですよね。

買うという申し込みがあったから、その準備をしていたのに「やっぱり、やめます。」と突然言われると困りますよね。

このように、申し込みを取消すことを撤回というのですが、この撤回がいつまで、できるのかということで、差が生じます。

つまり、到達主義をとれば、手紙を出してから、相手方に到達するまでは、未だ申し込みがあったことにはならないわけですから、相手方に到達するまでは、いつでも撤回することができます。

反対に、発信主義を取れば、手紙を出した時点で、申し込みがあったことになるわけですから、相手方に到達する前であっても、もはや勝手に撤回することはできません。

これが、到達主義と発信主義の違いです。

そして、我が国の民法は、到達主義を原則としています。

次に、2項ですが、手紙を出した後に、その人が死亡したり、行為能力を喪失したりした場合の規定です。

さきほどの事例で、北海道の土地を買おうと思って、手紙を出した後に、死んでしまった場合。

そのような時でも、申し込みの効力は失われません。これを規定したのが2項です。

本来、死亡したり、行為能力を失っていれば、契約は成立しませんが、手紙を送る、つまり、申し込みをした後に死亡や行為能力喪失という事情があったとしても、申し込みの効力は失われないということです。

ですから、その後に北海道の不動産屋が承諾すれば、死んだ人との間に、土地の売買約が成立することになります。

実際には、その死亡した人の相続人がその契約を引き継ぐことになります。

行為能力という言葉は、7条くらいからの説明で解説していますので、分からない方は、バックナンバーで確認しておいてくださいね。

■■ 豆知識 ■■

また、526条の解説で、紹介しますが、軽く説明をしておきます。

さきほど、わが国の民法は、到達主義を原則としているといいましたが、例外として発信主義を定めている場合があります。

それが526条なのですが、隔地者間での契約の承諾の場合です。

さきほどの、事例でいえば、北海道の不動産屋も手紙で、承諾の通知を出したとします。

すると、その場合は、手紙を発信した時点で、承諾があったことになり、手紙を発信した時点で、売買契約が成立します。

また、詳しいことは、526条のときに解説します。

■■ 編集後記 ■■

法律の勉強をすると、論理的な思考をすることができます。

法律で大事なことは、相手を説得することなのです。

それも、権力や、感情に訴えて相手を説得するのではなく、論理で相手を説得するのです。

これは、すごく大事な事で、どんな場面でも、活用することができると思います。

だからこそ、法律の勉強をぜひ頑張ってください。

分からなくてもいいので、読み続けていけば、何か必ず得られるものがあると思います。

何か、物を売るときでも、いかにこの製品が素晴らしいかを相手に説得的に説明できる。

何か、企画を提案した時に、いかにこの提案が素晴らしいかを上司に説得的に説明することができる。

活用方法は無限です。

世界各国の大統領や主席、総理が法律家出身者であることが多いのは、ある意味当然なのだと思います。

法的思考をよくリーガルマインドといいますが、ほんとに重要な能力だと思います。

これからも頑張っていきましょう!!

発行:株式会社シグマデザイン
http://www.sigmadesign.co.jp/ja/

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