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第355号 2012・6・12

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。今日は、民法418条の解説です。

内容としては難しくないのですが、試験との関係で知識として知っておいた方がいいものがいくつかあります。

この際に覚えてしまって下さい。

ある読者さんから、こんな質問がありました。

みなさんにも関係のある質問かと思いますので、この場で回答させていただきます。

質問は、今年宅建を独学で受験する予定で、市販の本で何かおすすめの本を教えて欲しいということです。

正直に言って市販の本では、そこそこ良いくらいのものしかありませんね。

なのでAmazonのレビューなんかで良いのを買えば良いのではないかと思います。

私が本気で宅建の参考書を作ったらもっと分かりやすいのを作れるかもっていう自信がちょっとはありますけどね(笑)

それでは、さっそくはじめましょう。

▼▼▼ 第418条(過失相殺) ▼▼▼

債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

■■ 解説 ■■

418条の趣旨は、損害賠償制度を指導する公平の原則と、債権関係を支配する信義則の現れです。

難しい事を言うよりも、具体例で説明した方が分かりやすいと思いますので、具体例を挙げます。

具体例は何でもいいのですが、甲乙間で、甲を売主、乙を買主とする売買契約があったとします。

甲さんが、約束の期日に目的物を引き渡さなかったので、履行遅滞(415条前段)になり、乙さんが損害賠償請求権を取得しました。

そして、損害賠償額は100万円(416条)と決まったとします。

甲さんは履行遅滞によって債務不履行に陥っているわけですが、この時に実は以下のような事情がありました。

甲さんは、約束の期日に目的物を引き渡そうと、乙さんの家まで目的物を持って行きました。

しかし、乙さんは引っ越して別のところに住んでおり、引き渡すことができませんでした。

甲さんは、乙さんの住所をきちんと確認していなかったという過失があり、約束の期日に引き渡すことができなかったのです。

他方で、乙さんの方も、引っ越した時に、甲さんに何の連絡も入れていませんでした。

きちんと住所を調べて確認を取っておかなかった甲さんにも過失があるし、乙さんも引っ越した時に甲さんに一言も連絡を入れなかったという点では過失があります。

要するに、甲さんは債務不履行責任を負うけど、その原因として乙さんにも過失があり多少の帰責性があるという状態です。

このように債権者にも過失がある場合にまで、損害賠償額の全額を負担させるというのは公平ではありません。

そこで、418条は、債権者に過失がある場合には、過失相殺によって損害賠償額を減額することができることを規定したのです。

■■ 豆知識 ■■

まだ不法行為を解説していないのですが、頭の片隅に入れておいて欲しい知識を紹介します。

この418条と似たような条文として722条2項というのがあります。

418条は、債務不履行に基づく損害賠償の過失相殺規定で、722条2項は不法行為に基づく損害賠償の過失相殺規定です。基本的に内容は同じなのですが、2点だけ異なる点があります。

注意深く条文を読む癖が付いている人は気付くと思いますので、条文を紹介します。

何が違うのか少し自分で考えてみて下さい。

〜民法第722条〜

1項
第417条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。

2項
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

どうでしょうか?

最後の方の文言が少し違いますよね。

418条...損害賠償の「責任」及びその額を「定める」...

722条2項...損害賠償の額を定めることが「できる」...

まず、1点目です。

最後のカギ括弧の部分を比べて見て下さい。

418条は、「定める」と必要的なのに対して、722条2項のは、「できる」と任意的に規定してあります。

裁判所は、債務不履行に基づく損害賠償の場合には、過失は必ず考慮して賠償額を減額しなければならないのです。

他方で、不法行為に基づく損害賠償の場合には、過失は必ずしも考慮しなくてもよく、その場合には賠償額を減額する必要はありません。

次に、2点目。

418条は、「責任」という文言が入っているのに対して、722条2項には「責任」という文言が入っていません。

裁判所は、過失相殺に基づく損害賠償の場合には、賠償責任そのものを否定することができるのです。

賠償責任が否定されれば、そもそも責任がないわけですから損害賠償額は当然ゼロです。

厳密に言うと、損害賠償額がゼロというよりは、そもそも責任がないのですから損害賠償額がいくらかという議論にはなりません。

責任が認められて、初めて賠償額の算定に入るという順番ですから。

他方で、不法行為に基づく損害賠償の場合には、「責任」という文言がないので、裁判所は責任を否定することはできません。

さて、この2点の違いはどのような趣旨から出てくるのでしょうか?

こういう時は、趣旨から考えるというのが民法の鉄則です。

722条2項が過失相殺を任意的とし責任を免れないとした趣旨は、被害者の救済です。

債務不履行というのは、さきほどの事例のように目的物を引き渡すのが遅れたとかいう話ですので、当事者が対等の立場として存在しています。

加害者とか被害者とかいう話にはなりません。

しかし、不法行為に基づく損害賠償というのは、交通事故で死亡したとか、後遺症が残ったとか。

昨日の昼間に大阪の心斎橋で起こった悲惨で許し難い事件のように、誰かに殺害されたというような場面です。

せめて被害者を金銭的に救済しなければならないという要請が強く働きます。

たとえ、被害者に何らかの過失があったとしても、裁判所はその過失を考慮せず、全額の損害賠償を命じることができます。

また、被害者に何らかの過失があったとしても、裁判所は賠償責任を否定することはできません。

加害者は賠償責任を免れることはできないのです。

2点とも被害者を救済する方向に働いていますよね。

これが418条と722条2項に違いをもたらしている理由です。

不法行為の場合は被害者救済の要請が働くというのを覚えておけば、「どっちがどっちだったかな?」とか迷うことはありません。

忘れてもその場で趣旨から考えれば答えは出せるはずです。

■■ 編集後記 ■■

418条は、論点などがあるわけではありませんので、内容としては難しくはありません。

ただし、豆知識で紹介した722条2項との比較で出てくる2点の相違点だけは覚えてしまって下さい。

不法行為の被害者救済という要請から考えると覚えるのはそれほど難しくはありません。

今回の条文は、趣旨から考えるとか比較して共通点と相違点を考える、という民法の基本的な思考方法の訓練になったと思います。

それでは、次回もお楽しみに。

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アップルの開発者向けイベント「WWDC2012」が楽しみです。

iPhone5、iPadMini、MacBookPro、とかいろんな噂がありますね。

もうすぐしたら、ニュースなどで内容が明らかになると思います。

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