第354号 2012・6・7

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。 今日は、民法417条の解説です。

最近少し、重たい条文が多かったのですが、今日は簡単ですのですぐに終わります。

これから司法書士試験、宅建試験、行政書士試験と試験シーズンに入ります。受験される方は、頑張って下さいね。

試験に合格するために絶対必要なのは、試験によく出題される重要なな事を暗記することです。

暗記してなければ試験には絶対に合格できません。

司法試験の世界で圧倒的な実績を叩き出し、カリスマ講師と言われている伊藤塾塾長の伊藤真先生が「記憶する技術」という新しい本を出されました。

さすが伊藤先生という内容です。

暗記に自信がない人は、読んでみて下さい。

↓記憶する技術(伊藤真)

記憶する技術(伊藤真)

もう一度言います。試験に合格するためには暗記するという地道で苦しい作業から逃げることはできません。

必要な事は絶対に逃げずに暗記しましょう。

それでは、さっそくはじめましょう。

▼▼▼ 第417条(損害賠償の方法) ▼▼▼

損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

■■ 解説 ■■

特に解説することはありません。415条の要件を充たして損害賠償請求権が発生した場合、お金で解決しましょうということです。

私たちの感覚からすればごく当たり前の事ですよね。ここからは聞き流してもらってもかまいません。

なぜ、このような規定がわざわざあるのかを少しだけ説明します。

今の民法というのは、100年以上も前に作られた法律で、フランス人のボワソナードという人が中心になってフランスのナポレオン民法をベースに作りました。

ナポレオン民法は、当時としては画期的で極めて自由主義的な法律でした。

しかし、あまりにも目新しく画期的だったため、その当時の多くの日本人が持っていた価値観を根本から崩しかねない内容で、「民法出でて、忠孝滅ぶ」とまで言われ一大論争が置きました。

当時の日本は、全体主義的思想や家長を中心にした家制度、男尊女卑的な価値観が当たり前のものとして教育されていました。

長年の徳川幕府を中心とした武家社会で、日本全体を統治するためには都合が良かったからです。

そんな時代に、個人主義的・自由主義的なナポレオン民法なんてものを持ち込むと、一気に支配体制が崩壊しかねないと考えたわけです。

一大議論になったらしいのですが、結局、施行は延期され、当時の日本の価値観にもう少しすり寄った民法に修正されることになりました。

根本的に価値観が異なっているわけですから、修正といっても実質的にはゼロから作り直すに等しいもので、修正には膨大な時間とコストがかかります。

これでは、とても短期間で完成させることができないので、すでに出来ていた民法をベースに、当時の日本の価値観と近かったドイツ民法の良い所を部分的に取り入れてミックスさせて完成させたのです。

それをしたのが、穂積陳重、梅謙次郎、富井政章でした。

余裕があれば彼らの名前くらいは知っておいた方がいいでしょう。

したがって、今私たちが使っている民法というのは、フランス民法とドイツ民法のいいとこ取りをしミックスされたちょっと変な民法になってしまっているのです。

そして、ドイツ民法では、損害賠償の方法として、原状回復を基本としているのです。

債務不履行がなかったとしたら存したであろうと推測される状態への復旧を要求できるのです。

私たちの民法では、そのような制度は採用せずに金銭による賠償を原則としますよということを宣言したのがこの417条なのです。

民法417条は、ドイツ民法と比較することで存在意義が理解できる条文です。

■■ 豆知識 ■■

今日は特にありません。

■■ 編集後記 ■■

私はドイツ民法に詳しくないので、よく分かりませんが、日本の民法からすると417条は論理必然で導かれるのではないかと考えています。

みなさんも一度考えてみて下さい。

日本の民法の下で、損害賠償の方法として原状回復というのはあり得ないような気がします。

債務不履行を履行遅滞、履行不能、不完全履行に類型化し、特定物と不特定物を峻別するという考え方をすると、原状回復が認められる場合というのは考えにくいですよね。

おそらくドイツ民法とは債務不履行の考え方が少し違うのではないかと思います。

はじめに紹介した私の先生でもある伊藤真先生の本は、今年絶対に試験に合格したい人にとって必読の本ですよ。

今の日本の知識中心の試験制度では、記憶力がある人が圧倒的に有利です。

↓記憶する技術(伊藤真)

記憶する技術(伊藤真)

それでは、次回もお楽しみに。

発行:株式会社シグマデザイン
http://www.sigmadesign.co.jp/ja/

日本で実施されている資格を調べるには資格キングをご利用下さい。

なお、配信解除希望とのメールをいただくことがあるのですが当方では応じることができません。解除フォームよりご自身で解除していただきますようお願いいたします。

(裏編集後記)

受験生におすすめの在宅アルバイト。簡単な文章を入力するだけでお小遣い稼ぎができます。文章を書く訓練にもなって一石二鳥のお仕事です。

ソニーの時価総額が一時的に1兆円を切りました。

日本を代表する企業として、最先端技術を擁して世界を席巻していた企業がこれほど落ちぶれてしまうなんて、ちょっと悲しいですね。

ミクシィの廃れっぷりもすごい。

時代がとてつもないスピードで変化しているのをひしひしと感じます。

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