第333号 2009・7・14

■■ はじめに ■■

みなさん、こんにちは。昨日の夜は、東京都議選で民主党が圧勝しました。

いよいよ政権交代が現実のものとなってきました。民主党でも自民党でもあまり変わらないという意見もありますが、大きな間違いだと思います。

政権交代が起きれば、間違いなく日本は今よりよくなるでしょう。

あり得ないことだとは思いますが、もし、仮に民主党に政権担当能力がなかったとしても、政権交代という事実が大事なんだと思います。

別に民主党じゃなくてもいいんです。

一つの政党が長年に渡って権力の座にいるということが問題なのです。まさに、「権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対的に腐敗する。」なのです。

読者のみなさんは憲法の勉強をしたことがある人が多いと思いますので、憲法と関連して1つ例を挙げましょう。

例えば、公務員の労働基本権についての有名判例の流れを見ればわかります。

憲法を勉強したことがある人であれば、公務員の労働基本権と聞いてすぐに思い出さなければならない3つの超有名判例があります。

昭和41年の全逓中郵事件、昭和44年の都教組事件、昭和48年の全農林警職法事件です。

昭和41年の全逓中郵事件と昭和44年の都教組事件では、公務員の労働基本権を非常に厚く保護するリベラルな判決がでました。

全逓中郵事件では、非常に厳格な審査基準が使われ、それを受けて都教組事件では、有名な「二重の絞り論」が使われました。

にもかかわらず、全農林警職法事件では、容易に公務員の労働基本権の制限を認める判決が出ています。

この理由は簡単で、昭和44年から全農林警職法事件判決が出る昭和48年までの間に内閣が自分たちに有利な判決を書く裁判官を最高裁判所に送り込んだからです。

全逓中郵事件と都教組事件で、最高裁判所が内閣に不利な判決を出したものですから、内閣に有利な判決を書いてくれる裁判官を意図的に送り込み、最高裁判所の裁判官の構成を変えてしまったからです。

憲法の勉強をすればすぐにわかるのですが、最高裁判所の裁判官は内閣が指名・任命します(憲法6条2項、79条1項)。

つまり、内閣が実質的には最高裁判所を支配しているのです。

別に、公務員の労働基本権に関する判例に限らず、国に不利な判決がほとんど出ないのはいわば当然のことなのです。

国にとって不利な判決を出した裁判官は出世できず、下手すれば地方に左遷されるというのも有名な話です。

こういう不公正をなくすには、政権交代しかないですし、憲法もそれを期待しているのです。

こういう最高裁判所の話に限らず、あらゆる部分で政権交代がもたらすメリットというのは計り知れないものがあると思います。

前置きが長くなりましたが、それでは、さっそくはじめていきましょう。

第400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)

債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

■■ 解説 ■■

特定物というのは、次回の解説に出てくる種類物と対をなす概念で、具体的な取引において当事者の個性に着目した物を言います。

例えば、中古車、不動産、美術品などです。

目の前にある「この中古車」と言った場合、その中古車の年式、色、走行距離、エンジンの調子などの個性に着目しているわけです。

このような特定物の引渡しを目的とする債権については、債務者は、実際に債権者に引渡しをするまで善良な管理者の注意義務を負うということを規定した条文です。

善良な管理者の注意義務を略して「善管注意義務」といいます。

善管注意義務の具体的な内容としては、債務者の属する階層・地位・職業などにおいて一般に要求されるだけの注意を意味します。

例えば、中古車屋のAさん(売主)とBさん(買主)の間でベンツの売買契約がなされたとします。

この場合、Bさんは特定物である中古車のベンツを引き渡せという債権を有しますので、その債務者である中古車屋のAさんは、そのベンツを引き渡すまでは善管注意義務を負うことになります。

何らかの事情で、保管中にベンツに傷がついてしまった場合、車の扱いに関して素人の人であれば、傷がつくことを防ぐことができなかったような場合であったとしても、プロの車屋であれば、傷がつくことを防ぐことができた場合を想定してください。

車の扱いに関して素人の人であれば、注意しないようなことでも、プロの車屋であれば、当然注意するのが当たり前になっていることというのはありますよね。

そういう場合であるにも関わらず中古車屋のAさんがベンツに傷をつけてしまった場合には、善管注意義務違反となり損害賠償請求されるということです。

要するに、善管注意義務違反があったかどうかは、一般人を基準に決めるのではないということです。

この条文の知識は重要なので、趣旨を深く考えるというよりも、そういうものだと思って結論をしっかりと覚えておいてください。

■■ 豆知識 ■■

民法では、善管注意義務を負わされる場合が他にもたくさんあります。

また、善管注意義務よりも軽い注意義務として「自己の財産におけるのと同一の注意義務」というのが規定されています。

また、出てくるたびに解説しますが、絶対に知識として覚えてしまった方がいいものだけここで挙げておきます。

余裕があれば、この機会にここで挙げたものだけでも、六法を見ながら覚えてしまってください。

〜善管注意義務〜

委任契約の受任者(644条)

〜自己の財産におけるのと同一の注意義務〜

無償の受寄者(659条)

■■ 編集後記 ■■

冒頭で憲法の条文と関連して政権交代の必要性を書きました。

法律の勉強をしながら、それが具体的に社会でどのように問題になっているのかということを意識すると法律の勉強が面白くなってくるかと思います。

特に、憲法は新聞やニュースで話題になるような問題に関連していることが多いので、憲法の勉強は法律の中でも面白い方だと思います。

よくテレビで、評論家や知識人気取りの人が財源論について話しています。

特に民主党の議員などが政策を出すと、「具体的に財源はどうするのか?」と突っ込みを入れたり、「もっと具体的にマニフェストに数字で示せ」と言っています。

しかし、そいうい議論は全くのムダであり、そういう質問をする人というのは、日本の政治体制の最も基本的なことを理解できていないし、つまりは憲法を全く理解していないということです。

民主党は野党であり、日本は議院内閣制を採用しているということすら分かっていないのです。

また、機会があれば書きたいと思いますが、憲法の勉強をしたことがある人は、一度考えてみて欲しいと思います。

それでは、次回もお楽しみに!!

発行:株式会社シグマデザイン
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なお、配信解除希望とのメールをいただくことがあるのですが当方では応じることができません。解除フォームよりご自身で解除していただきますようお願いいたします。

(裏編集後記)

受験生におすすめの在宅アルバイト。簡単な文章を入力するだけでお小遣い稼ぎができます。文章を書く訓練にもなって一石二鳥のお仕事です。

日本で最大の権力者は、マスコミだと言われています。

その強大な権力を持つマスコミがあまりにもレベルが低くて腹立たしい限りです。

時間の問題だと思いますが、早くテレビ局が淘汰されて欲しいですね。

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