第95号 2005・12・13

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。今日は、95号です。

今日は、今までにも何回か言葉は出てきたのですが、「無権代理」という言葉を説明します。

113条の解説なのですが、あまり深入りすると、難しくなりすぎてしまうので、とりあえず、だいたいの意味だけ説明しようと思います。

▼▼▼ 第113条(無権代理) ▼▼▼

1項
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

2項
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができな。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

■■ 解説 ■■

今まで、何度か「無権代理」という言葉は出てきましたよね。

簡単にいうと、そのままな のですが、「権利の無い代理」をしたということです。

そして、それをした人を無権代理人といいます。

さて、この無権代理ですが、例えば、Bさんが代理権もないのに、「Aさんの代理人です 。」と言って、勝手にCさんと取引をしたような場合です。

この場合、代理権がないので、このような契約は無効(※1)で、無権代理となります。

ただ、この無効というのが、当然に無効になるわけではないのです。

今までは、当然に無効になるというような言い方をしてきましたが、正確に言うと「本人 が追認しない限り無効になる」のです。

どういうことかと言うと、さきほどの事例のように、Bさんが勝手に代理人としてCさん と取引をしてきた場合、仮にAさんの土地を買ってに売ってきたとします。

普通は、Aさんとしては「勝手なことをするな!」と思いますよね。

でも、Bさんが非常 に優秀な人で、通常の時価の倍くらいの値段で土地を売ることに成功した場合、むしろA さんは、「よくやった!」と言って契約を有効にしたいと思う場合もあります。

そのような、本人の利益を考えて、本人が追認をすれば、無権代理は遡って有効になるの です。

それを規定したのが、この113条1項です。

そして、相手方であるCさんからしても、無効になるよりは、有効になった方がいいです よね。

だって、もともと本人であるAさんと取引をするつもりだったのですから。

つまり、代理権がないにもかかわらず、無権代理をされた場合は、原則として無効なので すが、勝手に無権代理をされた本人Aさんが、その契約の効果が自己に帰属することを望 んだ場合には、無権代理であっても有効にしましょうということです。

本人が追認することによって、無かった代理権が遡ってあったことになるというイメージ です。

これが113条1項です。

2項については、簡単なのですが、明日に説明したいと思います 。

(※1)実は、無効というのは不正確な言い方で、正確には契約が無効になるわけではなく本人に効果が帰属しないという意味です。

■■ 豆知識 ■■

今、説明しているのは、無権代理ですが、それと似たような概念として、他人物売買というのがあります。

例えば、Aさんの持っている甲土地を、Bさんが、「甲土地は自分の物です。」と言ってCさんに売ってしまった場合です。

無権代理と他人物売買は非常に似ているのですが、実は全く異なります。

他人の物を自分の物として売っている場合が、他人物売買。他人の物を代理人として売っている場合が、無権代理となります。

ややこしいですが、しっかりと区別できるようにしてください。

■■ 編集後記 ■■

いろいろな難しい言葉が出てくると混乱してきます。

法律の言葉は、ややこしいので、まずは、言葉の意味をしっかりと覚えるようにしましょう。

少しずつ慣れてくると思いますので、あまり考えすぎず淡々と読み続けるということも大事ですので、あまり気にしすぎないようにしてくださいね。

発行:株式会社シグマデザイン
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