第385号 2018・7・10

■■ はじめに ■■

みなさん。こんにちは。

ちょっと久しぶりの発行になってしまいました。

今日の条文は、破産法と関連する条文で、少しややこしい内容です。

ただ、民法の中ではそれほど重要な条文ではないので、一応詳しく説明はしますが、さらっと読み流していただければ十分です。

それから、もしこのメルマガの読者さんの中に、今年の宅建試験を受験するという人がいれば、試験の申し込みが始まっていますので、申し込みを忘れないようにしてくださいね。

ちなみに、申し込み期間は以下の通りです。

↓インターネット申し込み
平成30年7月2日(月)9時30分から7月17日(火)21時59分まで

↓郵送申込み
平成30年7月2日(月)から7月31日(火)まで

宅建試験でも民法は超重要な科目ですし、合格後に不動産に関わる仕事をする際にも必要な知識ばかりなので、民法はがっつり勉強して下さいね。

それでは、早速始めていきましょう。

▼▼▼ 第441条(連帯債務者についての破産手続の開始) ▼▼▼

連帯債務者の全員又はそのうちの数人が破産手続開始の決定を受けたときは、債権者は、その債権の全額について各破産財団の配当に加入することができる。

■■ 解説 ■■

まず、破産財団の意味を簡単に説明します。

破産財団とは、破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するものをいいます(破産法2条14項)。

これが破産法における定義なのですが、もっと簡単に言うと、破産者が破産した時に持っている全財産で、破産管財人によって管理されて、その後に破産債権者全員の配当に充てられる財産のことです。

例えば、Aさんが破産したとして、その時点で100万円の現金があったとします。

簡単に言うと、その100万円が破産財団であり、Aさんの債権者たちがその100万円から、原則として債権額に応じて按分(あんぶん)してそれぞれ配当を受ける事になります(破産法152条)。

さて、ここからが民法441条の解説です。

具体例で説明した方が分かりやすいと思いますので、具体例を挙げます。

連帯債務者B、C、Dが債権者Aに対して300万円の連帯債務を負っているとします。

その後、連帯債務者のB、C、Dの全員が破産したとします。

この時、債権者Aは連帯債務者B、C、Dのそれぞれの破産財団に対して、300万円全額について配当に加入することができます。

連帯債務者が3人いるので、300万円を3で割って、Bに対して100万円、Cに対して100万円、Dに対して100万円になるわけではないという事です。

この理由は連帯債務の本質に関わってきます。

以前にも解説したように、連帯債務というのは、債権者の各連帯債務者に対する債権がそれぞれ別個に独立したものだからですね。

それで、具体的にどうなるのかというと、仮に債権者Aが、連帯債務者B、C、Dの各破産財団から10%の配当を受けられることが決定したとします。

とすれば、債権者Aは、Bから30万円(300万円x10%)、Cから30万円(300万円x10%)、Dから30万円(300万円x10%)の合計で90万円の配当を受けることができます。

もし、債権の全額について各破産財団の配当に加入できず、3分の1ずつの100万円ずつしか加入できなかったらどうなるでしょう?

その場合には、債権者Aは、Bから10万円(100万円x10%)、Cから10万円(100万円x10%)、Dから10万円(100万円x10%)の合計で30万円の配当しか受け取れない事になります。

この点で、債権者としては連帯債務である事によって、より多くの債権を回収することができるため有利になりますね。

■■ 豆知識 ■■

民法とは関係の無い破産法の知識になるので、読み飛ばしていただければいいのですが、一応豆知識として紹介しておきます。

先ほどの具体例とは少し違って、Bのみが先に破産して、債権者Aが30万円の配当を受けたとします。

その後に、C、Dも破産したとします。

この場合、債権者AはC、Dの破産財団に対して300万円全額の配当加入ができるかについて学説上争いがあります。

これに関しては破産法104条があって、全額配当加入することはできず、既に配当を受けた分を差し引いた270万円(300万円-30万円)についてのみ配当加入ができると規定されています。

ちなみに、104条2項は任意に弁済をした場合についての規定です。

念のために条文を載せておきますので、条文を読み解く事に慣れるために目を通しておいてください。

(参照条文)破産法 第104条
1項
数人が各自全部の履行をする義務を負う場合において、その全員又はそのうちの数人若しくは一人について破産手続開始の決定があったときは、債権者は、破産手続開始の時において有する債権の全額についてそれぞれの破産手続に参加することができる。

2項
前項の場合において、他の全部の履行をする義務を負う者が破産手続開始後に債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為(以下この条において「弁済等」という。)をしたときであっても、その債権の全額が消滅した場合を除き、その債権者は、破産手続開始の時において有する債権の全額についてその権利を行使することができる。

3項
第一項に規定する場合において、破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者は、その全額について破産手続に参加することができる。ただし、債権者が破産手続開始の時において有する債権について破産手続に参加したときは、この限りでない。

4項
第一項の規定により債権者が破産手続に参加した場合において、破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者が破産手続開始後に債権者に対して弁済等をしたときは、その債権の全額が消滅した場合に限り、その求償権を有する者は、その求償権の範囲内において、債権者が有した権利を破産債権者として行使することができる。

5項
第二項の規定は破産者の債務を担保するため自己の財産を担保に供した第三者(以下この項において「物上保証人」という。)が破産手続開始後に債権者に対して弁済等をした場合について、前二項の規定は物上保証人が破産者に対して将来行うことがある求償権を有する場合における当該物上保証人について準用する。

■■ 編集後記 ■■

今回の条文は、破産法に関連するので民法の問題として出題されることはまずないと思います。

また、豆知識の部分については、完全に破産法の分野ですので、読み飛ばしていただいても大丈夫です。

ということで、今回の条文は、それほど気にしないでも大丈夫です。

それでは、次回もお楽しみに。

発行:株式会社シグマデザイン
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なお、配信解除希望とのメールをいただくことがあるのですが当方では応じることができません。解除フォームよりご自身で解除していただきますようお願いいたします。

(裏編集後記)

さっき、印鑑証明を取るために役所に行ってきました。

そしたら、前のおばちゃんが、役所のおじさんと「委任状が有るとか無いとか」で揉めてて、かなり待たされました。

確かに、役所の手続きは形式がきっちり決まっていて、普通の人には分かりにくい事が多いですよね。

それで、ふと横を見ると壁に美人のモデルさんを使った大きな行政書士のポスターが貼ってありました。

キャッチコピーは「街の頼れる法律家」でした。

もう私は行政書士としての仕事はやめましたが、やっぱり行政書士もやる気があればやりがいのある人の役に立つ事ができる仕事だなぁと思いました。

皆さんの中にも行政書士試験を受験している人もいると思います。

頑張って合格して、早く仕事ができるようになって下さいね。

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