第381号 2018・5・25

■■ はじめに ■■

みなさん。おはようございます。

連帯債務の絶対効についての説明に入っています。

履行の請求、更改、相殺と説明してきましたよね。

今日は4つ目の免除です。

この免除も前回の他人の債権で相殺した場合のように負担部分について絶対効という少し分かりにくい概念が出てきますので、具体例でイメージしながら理解しましょう。

それでは、早速始めていきましょう。

▼▼▼ 第437条(連帯債務者の一人に対する免除) ▼▼▼

連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益の為にも、その効力を生ずる。

■■ 解説 ■■

条文を読めば意味はだいたい分かると思いますが、一応解説します。

債権者が連帯債務者の一人に対して免除をした場合、その免除した連帯債務者が負担していた部分についてのみ、絶対効が生じ他の連帯債務者の債務も消滅するということです。

免除というのはまだ解説していませんが、簡単に言うと、債権者が意思表示によって債務を消滅させる行為です。

519条で出てくるので詳細はそこで解説します。

ちなみに民法全体の体系で考えると、免除というのは、債務が消滅する場合の規定なので、同じく債務が消滅する弁済や相殺と同じ場所にあります。

つまり、「第3編 債権>第1章 総則>第5節 債権の消滅>第4款 免除」の部分にあります。

一度、それを意識しながら民法の条文を見てください。

民法全体の体系の理解が深まると思います。

具体例をあげて説明しましょう。

B、C、DがAに対して300万円の連帯債務を負っています。負担割合は均等とします。

この時に、AがBに対して免除したとします。

B、C、Dの負担割合は均等なので、それぞれ負担部分は100万円(300万円/3)ずつということになります。

免除されたBの負担部分は100万円なので、100万円について絶対効が生じ他の連帯債務者CとDについても効力が生じます。

Bは免除されたので負担部分は0となり連帯債務から免れることになります。

つまり、CとDが残りの200万円を連帯債務として負担することなります。

これが437条が規定していることです。

一人の連帯債務者に免除があった場合、その免除された者の負担部分について絶対効が生じるという意味ですね。

なぜ、このような規定があるのかと言うと、少しややこしいのですが、後に生じる求償関係を簡易化するためです。

もし、免除が相対効だったらどうなるでしょう?

先ほどの事例でAがBに免除しましたが、それが相対効だった場合、Bは免除されたのでAから請求されることは無くなりますが、債務額は減少しないので、CとDはBに対する免除と関係なく依然として300万円の連帯債務を負います。

この時に、Bは免除されたので、債権者Aからは請求されないだけで、B、C、Dの内部関係については依然として求償の義務を負います。

この段階で、CがAに300万円を弁済した場合、Aに対する連帯債務は消滅します。

Cの負担部分は100万円ですから、それを超えて300万円を支払ったので、BとDにそれぞれ100万円ずつを求償(442条1項)することになります。

Dについてはそれで終わりなのですが、BはAから免除を受けているのにCから求償されて100万円支払ったので、今度はAに不当利得の返還請求(703条)をすることになります。

これって、どう考えても無駄というか面倒ですよね。

弁済や求償や不当利得が、ぐるぐると回っているだけです。

こういう面倒なことが起こらないために免除を受けた者の負担部分について絶対効を認めているのです。

求償や不当利得についてはまだ解説していないので分からないと思いますので、後半の部分は読み流していただければ十分です。

■■ 豆知識 ■■

先ほどは、AがBの負担部分について全額の免除をした事例でしたが、一部免除の場合はどうなるでしょうか?

AがBに対して100万円を免除したのではなく、50万円を免除した場合です。

この場合の処理については、判例や学説の見解が別れていて争いのある論点です。

これを解説すると長くなるので、今回は省略させていただきますが、一度自分で考えて見て下さい。

さて、改正民法です。

免除に関する負担部分についての絶対効を定めた437条は削除され、相対効とされました。

その理由としては、債権者の意思として、連帯債務者の一人に対して免除をするというのは、その債務者に対しては請求しないけど、それ以外の者には全額請求したいと思っている事が通常だろうと考えられるからです。

現行民法ですと先ほど解説したように、AがBに免除するとBの負担部分である100万円について絶対効が生じ、残りのCとDに対して200万円しか請求できなくなってしまいます。

債権者の通常の意思としては、Bは免除するけど、残りのCとDには300万円請求したいと思っている事が多いだろうという事です。

そこで改正民法は免除を相対効として、残りの債務者に全額請求する事ができるようにしたのです。

ちょうど、解説の後半で相対効しか生じなかった場合を仮定して説明したのと同じ状況になるわけです。

そして、残りの連帯債務者が弁済した場合に、免除を受けた者に求償できるという事が明文化されました。

その条文を念のために載せておきます。

【改正民法 445条】
連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第四百四十二条第一項の求償権を行使する事ができる。

ちなみに債権者から免除を受けた者は、求償されたとしても、その後債権者に不当利得返還請求することはできないようです。

債権者は債権の行使により弁済を受けたのであり「法律上の原因」(703条)があるからだそうです。

■■ 編集後記 ■■

今日の解説は、求償、不当利得、改正の部分まで含めるとややこしかったと思います。

とりあえず、今は最初の方で解説した免除の場合、負担部分について絶対効というのだけ覚えておけば十分だと思います。

今回の民法改正は、本当にかなり大きな改正なので、内容的には難しいことは特に無いのですが、細かい変更が多いので大変です。

それでは、次回もお楽しみに。

発行:株式会社シグマデザイン
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