第380号 2018・5・24

■■ はじめに ■■

みなさん。おはようございます。

前々回くらいから、連帯債務において絶対効が生じる条文を解説しています。

履行の請求、更改については絶対効が生じるのでしたよね。

今日は3つ目の相殺についての解説です。

それでは、早速始めていきましょう。

▼▼▼ 第436条(連帯債務者の一人による相殺等) ▼▼▼

1項
連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。

2項
前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。

■■ 解説 ■■

まず1項です。

条文を読んでいただければ分かると思うのですが、連帯債務者の一人が債権者に対して反対債権を持っていて、それと連帯債務を相殺した場合は、全ての連帯債務者との間において連帯債務は消滅するということです。

例えば、B、C、DがAに対して300万円の連帯債務を負っているとします(負担割合は均等)。

この時に連帯債務者の一人であるBが債権者Aに対して、300万円の債権を持っていたとします。

そのBのAに対する300万円の債権を使って、AのB、C、Dに対する300万円の債権と相殺します。

相殺すると同じ金額の債権同志が消滅しますので、BのAに対する300万円の債権は消滅し、またAのB、C、Dに対する300万円の債権も消滅します。

この効果が直接相殺をしていないCとDとの間でも生じるということです。

相殺というのは505条で出てくる概念でまだ解説していないので分かりにくいかもしれません。

先ほどの例で簡単に説明すると、300万円の現金を支払う代わりに、自分が持っている300万円の債権で支払って、その代わりにその債権が消滅するという事です。

相殺については説明しなければならない事がたくさんあるので、505条のところで詳しく解説します。

1項はそれほど難しく無いと思います。

連帯債務で、債務者の一人が相殺を援用した場合、絶対効が生じるという事ですね。

次に2項です。

2項は、同じく相殺について規定しているのですが、先ほどとは状況が異なります。

先ほどの事例では、連帯債務者の一人であるBさんが債権者であるAさんに300万円の反対債権を有していて、それをBさんが援用して連帯債務を消滅させていましたよね。

自分の債権を使って自らの意思で相殺した場合です。

2項は、この時に、Bさんが相殺しなかった場合について規定しています。

Bさんがいろいろ不満を言って、相殺を援用しなかった場合、他の連帯債務者であるCとDは、Bの負担部分についてのみBさんの相殺を援用する事ができるのです。

援用というのは、簡単に言うと「相殺します。」と言う意思表示をする事です。

もう一度、さきほどの事例を見てみましょう。

B、C、DがAさんに300万円の連帯債務を負っており、負担割合は均等です。

とすると、Bさんの負担割合は100万円、Cさんの負担割合も100万円、Dさんの負担割合も100万円です。

Bさんの負担している100万円の範囲内において、CとDは、BがAに対して有している300万円の債権を使って相殺をする事ができるのです。

つまり、CとDは、BがAに対して持っている300万円のうち100万円分を使って相殺する事ができるのです。

これによって、連帯債務も300万円から200万円になり、B、C、DはAに対して200万円の連帯債務を負うことになります。

これはなかなかすごいことですよね。

本来、BさんはAに対する債権を持っていたとしても、それを援用して使うかどうかは自由のはずです。

なのに、それを他の連帯債務者が勝手に援用して使えると民法は規定しているのです。

その理由は何でしょう?

それは、後に生じる複雑な求償関係を簡易に決済することと、後に当事者が無資力になった場合の不公平を無くそうという趣旨です。

求償の話などもするとちょっと訳が分からなくなってくるかもしれませんので、今は説明するのはやめておきます。

442条で求償の説明をしますので、その時に詳しく説明します。

■■ 豆知識 ■■

1項は、連帯債務者の一人が自らの債権で相殺した場合の規定で、その場合には、全額について絶対効が生じます。

2項は、連帯債務者の一人が他の連帯債務者の有する債権で相殺した場合の規定で、その場合には、その連帯債務者の負担部分についてのみ絶対効が生じます。

他人の債権を使って相殺した場合には、その負担部分についてのみ絶対効というのを覚えておいて下さい。

ちなみに、今回の436条は1項は同じなのですが、2項が改正されています。

連帯債務者の一人が有している債権者に対する債権を、他の連帯債務者が勝手に援用できるというのはちょっと凄いですよね。

この部分については、他人の債権の処分に他人が干渉するのはやり過ぎだという批判が多かったのです。

そのため改正民法では、他人の債権の援用までは認めずに、負担部分について履行を拒む事ができるのみに留めました。

まだ少し先ですが、改正民法が施行された時のことも考えて一応知っておくとよいでしょう。

参考のために条文を載せておきます。ちなみに条文の番号もずれていて439条になっています。

【改正民法 439条】
1項
連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。

2項
前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒む事ができる。

■■ 編集後記 ■■

自分で解説していてもめんどくさいなと思う細かい知識がたくさん出て来ています。

しかも、改正されている部分なので、そのことも考えるとうんざりしますよね。

気持ちは分かりますが、条文を何度も何度も読んで覚えましょうね。

それでは、次回もお楽しみに。

発行:株式会社シグマデザイン
http://www.sigmadesign.co.jp/ja/

日本で実施されている資格を調べるには資格キングをご利用下さい。

なお、配信解除希望とのメールをいただくことがあるのですが当方では応じることができません。解除フォームよりご自身で解除していただきますようお願いいたします。

(裏編集後記)

Google Play Musicという月額1,000円で音楽聴き放題のストリーミングサービスを利用しているのですが、つい最近、Mr.Childrenの曲が全曲追加されました。

これは私くらいの世代にとっては本当に嬉しい。

ちなみにApple Musicでも同じように追加されたようです。

Mac、iPhone、iPadをメインで使っているのになぜGoogle Play Musicを使っているのかと言えば、Google Homeを使っているからです。

AppleのHome Podが日本でも発売されれば変更するかもしれません。

それにしても月額1,000円で聴き放題って良い時代になりましたよね。

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