第361号 2012・7・9

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。

今日は、民法423条の債権者代位権の解説の続きです。

債権者代位権と次の424条詐害行為取消権は、非常に重要な条文ですので、ゆっくり、じっくり解説したいと思います。

さて、1週間前くらいに買ったピアノが、昨日届きました。

楽譜も読めないし、鍵盤がどの音かも分からないし、めちゃくちゃ苦労しています。

まずは、楽譜に書いてある音符を見て、条件反射的にその鍵盤を叩けるようにする訓練が必要だと思いました。

民法でいうと問題文に「夫婦」というキーワードが出てきた時点で、条件反射的に761条の日常家事債務の一連の論点を思いつかなければならないというのと同じでしょう。

音符が出てきて、すぐに鍵盤を叩くという訓練をひたすら繰り返すiPad、iPhoneアプリを自分で作ろうかと真剣に検討中です。

自分の練習にもなって、お金儲けにもなって一石二鳥(笑)

法律の勉強でも、ピアノの練習でも、英語の勉強でも、暗記するという作業から誰もが逃れることはできません。

とすれば、他人と差を付けるためには、工夫して記憶の効率を上げるしかないんですよね。

択一式の試験で点数が取れないという人は、ほぼ間違いなく暗記ができていないのが原因ですから、暗記の効率を上げる事を検討してみて下さい。

それでは、さっそくはじめましょう。

▼▼▼ 第423条(債権者代位権) ▼▼▼

1項
債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利はこの限りでない。

2項
債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

■■ 解説 ■■

前回、債権者代位権についての基本的な解説をしたので、今回は要件を解説します。

債権者代位権の要件は以下の3つですが、それぞれさらに細かく理解しておく必要があります。

【債権者代位権の要件】

  1. 債権者が自己の債権を保全する必要があること(1項本文)
  2. 債務者が自らその権利を行使しないこと
  3. 被保全債権が原則として弁済期に達していること(2項)

まず、1の債権保全の必要性という要件です。

この要件を充たすためには、第一に被保全債権が金銭債権でなければなりません。

被保全債権というのは、前回にも出てきましたが、以下の図でいう甲が乙に対して持っている債権のことです。

以下、この図を使って解説しますので、3者の関係を理解しておいて下さい。

債権者甲

 |
 |
 |100万円の貸金債権
 |
 |
 ↓
       100万円の売掛金債権
債務者乙 --------------------------→ 第三債務者丙

前回も述べましたが、債権者代位権の趣旨は、責任財産の保全と強制執行の準備です。

もし、上図で甲が乙に対して有している債権が「メルマガを発行しろ!」という債権だったとします。

そのような場合には、甲が乙の丙に対する100万円の売掛金債権を代位行使して回収したとしても、甲の「メルマガを発行しろ!」という債権には何の影響もありません。

債権者代位権の趣旨が全うできるのは、債務者(乙)の責任財産が増えることによって、債権者(甲)の債権が保全されるという関係が必要なのです。

第二に、債務者が無資力であるという要件も必要になります。

もし、債務者乙が十分にお金を持っていたとすれば、乙が丙に対して有している100万円の売掛金債権を回収しようがしまいが、どっちみち甲さんは何の問題も無く乙に対する100万円の貸金債権を回収することができます。

債務者に十分な資力がある場合には、債権者代位権の趣旨である債権保全の必要性が全くないわけです。

そのような場合にまで、債務者の財産権行使の自由に干渉することを認める必要はありませんよね。

そもそも、人が有している財産権を行使するかどうかは、その人の自由であって、それに対して他人が干渉するなんてことは許されないのが民法の大原則(私的自治の原則)なのです。

しかし、他方で、債権者としては債権が回収できなくなるような場合にまで、債務者の財産の行使を債務者の自由に任せておく事は我慢ならないでしょう。

この2つの対立利益をぎりぎりのところで調節しようとしたのが、債権者代位権と次の詐害行為取消権なのです。

あくまで例外的に認められる権利ですので、要件が厳しくなっているのです。

次に、2の債務者が自らその権利を行使しないこと、という要件です。

これは簡単です。債務者がすでにその権利を行使していれば、もはや債権者はその権利を代位することはできません。

最後に、被保全債権が弁済期に達していることです。

繰り返しになりますが、債権者代位権の趣旨は、責任財産の保全と強制執行の準備です。

もし、被保全債権が弁済期に達していなかったら、そもそもその債権は、現段階においては行使できない債権であり、当然強制執行をすることもできません。

つまり、被保全債権が、弁済期に達していない場合には、債権者代位権の強制執行の準備という趣旨に合致しないため、債権者代位権は認められないのです。

ただし、これには例外が2つあります。

1、裁判上の代位(2項本文)
2、保存行為(2項但し書き)

保存行為に関して例外が認められるのは、被保全債権の弁済期が到来するのを待っていたのでは、間に合わない場合があるからです。

例えば、さきほどの図で乙が丙に対して持っている100万円の売掛金債権があと1ヶ月で消滅時効にかかるという場面を考えてみて下さい。

甲の乙に対する債権の弁済期が2ヶ月後だとすると、被保全債権の弁済期が到来するまで待てば、代位債権が消滅時効で消滅してしまって、甲は責任財産の保全をすることができなくなります。

このような場合には、被保全債権の弁済期到来に関係なく、丙の乙に対する債権を行使して、時効を中断しておく必要があるのです。

1の裁判上の代位に関しては、裁判所の関与がある場合には、不当な干渉になることはないだろうという事です。

さきほども申し上げましたように、債権者代位権というのは、人は財産を自由に処分できるという民法の大原則に例外を認めて干渉していく権利です。

だから、簡単に認めるわけにはいかないのですが、裁判所が関与している場合には、裁判官が不当な干渉にならないようにうまくやってくれるだろうということです。

■■ 豆知識 ■■

今日は、特にありません。

■■ 編集後記 ■■

債権者代位権の要件は、少し複雑ですので、きちんと整理して理解しておいて下さい。

最後に少しまとめておきますので、参考にしておいて下さい。

【債権者代位権の要件】

1、債権者が自己の債権を保全する必要があること(1項本文)

(a)被保全債権が金銭債権

(b)債務者の無資力要件

2、債務者が自らその権利を行使しないこと

3、被保全債権が原則として弁済期に達していること(2項)

(a)例外1:裁判上の代位

(b)例外2:保存行為

それでは、次回もお楽しみに。

発行:株式会社シグマデザイン
http://www.sigmadesign.co.jp/ja/

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なお、配信解除希望とのメールをいただくことがあるのですが当方では応じることができません。解除フォームよりご自身で解除していただきますようお願いいたします。

(裏編集後記)

受験生におすすめの在宅アルバイト。簡単な文章を入力するだけでお小遣い稼ぎができます。文章を書く訓練にもなって一石二鳥のお仕事です。

買ったピアノが昨日届きました。

右手と左手を同時に動かすのが全くできません(汗)

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