第325号 394条 2008・6・7

■■ はじめに ■■

みなさん、こんにちは。

久しぶりの配信になってしまいました。

それでは、さっそくはじめていきましょう。

第394条(抵当不動産以外の財産からの弁済)

1項
抵当権者は、抵当不動産の代価から弁済を受けない債権の部分についてのみ、他の財産から弁済を受けることができる。

2項
前項の規定は、抵当不動産の代価に先立って他の財産の代価を配当すべき場合には、適用しない。この場合において、他の各債権者は、抵当権者に同項の規定による弁済を受けさせるため、抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる。

■■ 解説 ■■

民法394条は、抵当権者と一般債権の利益を調整している規定です。

抵当権者は、債務者に対する関係においては、抵当権を実行せずに債務者の一般財産に対して直接強制執行することもできます(394条1項)。

ただ、そうすると、抵当権を有しない一般債権者の期待を害してしまいます。

これでは。いまいちわからないと思いますので、具体例をあげて解説します。

例えば、Aさんが甲さんに対して500万円の債権を有しており、その債権を担保するために甲の家(価額:400万円)に対して抵当権を設定しました。

さらに、Bさんも甲さんに対して100万円の債権を有していたとします。

このような事例において、債務者甲さんの返済が滞ったとします。

そこで、抵当権者であるAさんは、債権を回収するために、抵当権を実行せずに、甲さんの一般財産に対して強制執行をかけました。

さきほども言ったように、抵当権者は債務者に対しては、抵当権を実行せずに一般財産に対して強制執行をかけることもできます(1項)。

もし、甲さんの有している一般財産の価値が60万円だったとします。

すると、各債権者の取り分は、債権者平等の原則により按分されます。

結局、AさんとBさんの取り分は以下のようになります。

A:50万円(60万円×500万円/600万円)

B:10万円(60万円×100万円/600万円)

↑ここでの分母になっている600万円というのは、Aさんの債権額500万円とBさんの債権額の100万円を足したものです。

抵当権者であるAさんが抵当権を実行せずに、いきなり一般財産に対して強制執行をかけたとすると、一般債権者であるBさんは、10万円しか回収することができないことになります。

しかし、Aさんが先に抵当権を実行してくれたら、Bさんの一般財産からの取り分は増えることになります。

なぜなら、抵当権を実行すると400万円の価値があるわけですから、その400万円からAさんが400万円を回収して残りの足りない100万円についてだけ一般財産に対して強制執行してくれればいいからです。

すると、債務者である甲の一般財産からAとBが債権を回収することができる額は、以下のようになります。

A:30万円(60万円×100万円/200万円)

B:30万円(60万円×100万円/200万円)

↑ここでの分母になっている200万円というのは、Aさんの残りの債権額100万円とBさんの債権額の100万円を足したものです。

このように抵当権者であるAさんが、抵当権を先に実行するかどうかで他の一般債権者の取り分が大きく変わってしまいます。

そこで、抵当権者と一般債権者の平等を図るために、一般債権者に抵当権者による一般財産の強制執行に対して、異議を申し立て、まず抵当不動産を競売して、それでも足りなかった分についてだけ一般財産に対してもかかっていくことができるように主張する権利を認めているのです。

■■ 豆知識 ■■

今日は、特に豆知識はありません。

■■ 編集後記 ■■

今日の条文は、理解するのは簡単だと思います。

解説を読めば、「なるほど!」と思っていただけると思います。

ただ、それほど重要ではない条文ですので、一度理解だけしていただければそれほど気にする必要はないと思います。

それでは、次回もお楽しみに!!

発行:株式会社シグマデザイン
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