第309号 380条 2008・1・29

■■ はじめに ■■

みなさん、こんにちは。今日は、380条の解説です。

前回からの抵当権消滅請求の解説の続きで、抵当権消滅請求をすることができる者の例外を定めた条文ですので原則論からもう一度確認しましょう。

少し話しが変わりますが、以前から少しずつ英語の勉強をはじめています。

だいぶ読めるようにはなってきたのですが、書いたり瞬間的に自分が言いたいことを言うのがまだまだ難しいです。

英語にしてもそうだし、民法にしてもそうですけど、人から聞いて納得しているだけでは、ほんとにマスターしているとは言えないんですよね。

自分で自由に話せて書けて、はじめてマスターしたというんでしょう。

つまり、アウトプットの勉強をしなければならないということです。

英語も民法も人から教えてもらったり、本やメルマガを読んだりするのもいいですけど、それと同時並行で英語を書くとか話すとか、民法の問題を解くとか、論文を書くとかしないとなかなか成長しません。

人から教えてもらったり本などを読む勉強、いわゆるインプットの勉強というのは自分でそれほど考えなくてもいいから楽なんです。

それに比べてアウトプットの勉強というのは、自分で考えなければならないからちょっとしんどいんですよ。

でも、そうやってわからないなりにも自分で考えている中で理解が深まるし、新しい発見があるんです。ということで、今英語の瞬間英作文というのをやっています。

短い文章を見てそれを5秒くらいで瞬間的に英語にして発音しています。

これがなかなかいいです。

さっそくはじめていきましょう。

▼▼▼ 第380条  ▼▼▼

主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

■■ 解説 ■■

前回の379条は、抵当権消滅請求をすることができる者の原則論を規定している条文でした。

379条は、「抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者」に抵当権消滅請求を認めていました。

つまり、抵当不動産の第三取得者に抵当権消滅請求が認められるが原則です。

ここに第三取得者とは、抵当権が設定されている不動産の所有権を取得した者をいいます。

そして、380条は抵当権消滅請求をすることができる者の例外を定めています。

例えば、AさんがBさんに1000万円の貸金債権を有していました。

さらに、Aはその債権を担保するためにCさんの土地に抵当権を設定していました。

その後、CがBにその土地を売却しました。

この場合、Bは抵当不動産であるCの土地を買い受けていますので、抵当不動産の第三取得者にあたります。

そこで、379条によってBは抵当権消滅請求をすることができるのが原則のはずです。

しかし、Bは抵当不動産の第三取得者であると同時に抵当権の被担保債権の主債務者です。

とすると、380条の「主たる債務者」に該当します。

したがって、例外としてBは抵当権消滅請求をすることができないことになります。

なぜ、このような例外が規定されているのでしょうか?いつものように抵当権消滅請求の趣旨から考えましょう。

そもそも抵当権消滅請求というのは、債務を負担しない抵当不動産の第三取得者を保護するものなのです。

例えば、みなさんが不動産屋から家を購入したとします。

その家には、全くの他人である甲さんの債務を担保するための抵当権が設定されていました。みなさんとしてはどうでしょうか?

自分が買った家に全くの他人である者の債務を担保するための抵当権が設定されているのです。

もし、その甲さんがきちんと債務を弁済しなければ、競売されてしまって、その家を手放さなければならないことになってしまいます。

自分が債務を負っていて、その返済ができなくなってしまったから、競売にかけられたというのであれば納得できますけど、全く自分に関係ないことで抵当権が実行され、競売によってせっかっく買った家を手放すことになるなんて普通は嫌ですよね。

だから、そういう他人の抵当権がついているような不動産を買った人に抵当権消滅請求を認めているのです。

これをさきほどの具体例にあてはめてみると、Cさんから土地を買ったBさんは、その土地の抵当権の被担保債権である1000万円の主債務者です。

確かに、第三取得者であるけれども、それと同時に当該土地に設定されている抵当権の被担保債権の主債務者なのです。

土地を競売にかけられるのが嫌だったら、しっかりと弁済すればいいだけの話です。

本来、自分が弁済しなければならないものを弁済せずに、抵当権消滅請求によって、抵当権を消滅させることができるというのはおかしですよね。ということで、379条のような例外が規定されているのです。

ちなみに、379条は、主債務者の他にも保証人及びこれらの者の承継人も規定していますが、さきほど解説した趣旨から考えれば同じ論理なのですぐに理解できると思います。

■■ 豆知識 ■■

今日は、特にありません。

まず原則論を考えて、次に例外を考える。

そして、例外が認められている趣旨は何なのか?

これを自分の頭で一度考えてみてください。

■■ 編集後記 ■■

今日の条文は、結論も覚えていただきたいですが、それよりも法律の基本的な考え方の訓練になるかと思います。

原則と例外、条文の趣旨などを考えるいい素材になる条文だと思います。

ぜひ、自分の頭でもう一度整理して考えてみてくださいね。

それでは、次回もお楽しみに!!

発行:株式会社シグマデザイン
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(裏編集後記)

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ウェブ時代をゆく

ウェブ時代をゆく いかに働き、いかに学ぶか

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