第296号 2007・11・10
■■ はじめに ■■
みなさん、こんにちは。今日は、民法370条の解説です。
370条は、大事な条文ですので、しっかりと理解してください。
話は少しそれますが、そもそも法律というのは、なぜ必要なのでしょうか?
本来、人間は自由であるにもかかわらず、なぜ法律によって私たちの行動が制約されているのでしょうか?
それは、私たち人間が、地球という一定の制限された範囲内で多数の他人と共同生活をしているからなのです。
様々な人間が存在すれば、当然様々な意見などが出てきます。
そうすると、争いが発生するわけです。
その争いを解決する必要があるから、その一手段として法律が必要なのです。
とすれば、争いを解決することができるよりよい手段が他にあれば、別に法律なんていらないわけです。
その一つの手段が話し合いです。
コミュニケーションです。
私は、人間にとってコミュニケーション能力というのは、すごく大事な能力であると思います。
それでは、前置きが長くなりましたが、さっそく始めていきましょう。
第370条(抵当権の効力の及ぶ範囲)
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下抵当不動産という)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第424条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りではない。
■■ 解説 ■■
さて、どうでしょう?
この条文は、87条2項とも関連している条文で複雑な条文です。
370条は、抵当権の効力の及ぶ範囲を規定しているのですが、まず、土地と建物は、別物ですから、土地について抵当権を設定したとしても、その土地の上の建物に抵当権は及びません。
次に、「付加一体物」に対して抵当権の効力が及ぶと規定されています。
では、「付加一体物」とは何なのでしょうか?
この点、附合物(242条)は、「付加一体物」に含まれ抵当権の効力が及びます。
なぜなら、附合物は、不動産の所有権に吸収されるからです。
ここまでは争いがありません。
争いがあるのは、従物(87条)が「付加一体物」に含まれ抵当権の効力が及ぶのかということです。
この論点は、判例と多数説が真っ二つに分かれているところです。
判例は、370条の「付加一体物」は、242条の附合物と同じ意味であると考えて、従物は「付加一体物」には含まれないとしています。
ただし、87条2項により、抵当権設定時に存在していた従物には抵当権の効力を認めています。
抵当権の設定が、87条2項の「処分」にあたるという論理です。
しかし、多数説は、従物も「付加一体物」に含まれ、従物が設置されたのが、抵当権設定の前後であるかに関係なく抵当権の効力が及ぶと主張します。
この判例の結論と、多数説の結論は必ず覚えてください。
できれば、論理もしっかりと理解してください。この論点は、法律系の資格試験にはほんとによく出題されます。
ここからは、聞き流していただければけっこうなのですが、多数説の理由は非常に説得的ですので、紹介しておきます。
そもそも、370条というのは、抵当権が目的物の交換価値を把握するものであるから、目的物と経済的・価値的一体性を有する物も交換価値に含まれるので、それらにも効力を及ぼそうとしているわけです。
そして、従物は設置されたのが、抵当権設定の前後であるか否かに関わらず、主物と経済的価値的一体性を有し、交換価値に含まれていると考えることができます。
そこで、抵当権設定の前後を問わず、従物は「付加一体物」に含まれると主張しているのです。
多数説の方が、論理的には説得力があります。
さて、370条は、但し書きがあります。
民法の大原則である私的自治から当然なので、解説するまでもないでしょう。
■■ 豆知識 ■■
資格試験によく出題されるものとして、ガソリンスタンドの判例があります。
ガソリンスタンドの建物に設定した抵当権の効力は、地下タンク等の設備にも及ぶという結論をおさえておきましょう。
地下タンク等の設備は、従物にあたるからです。
最後に、判例の立場から370条の結論だけをまとめます。
1、土地に抵当権を設定しても、その上に存する建物には抵当権の効力は及ばない。
2、附合物は、抵当権設定の前後を問わず効力が及ぶ。
3、従物は、抵当権設定時に存在していた場合にのみ抵当権の効力が及ぶ。
この3パターンの結論だけ覚えておきましょう。
多数説の立場からは、3だけ結論が異なりますので、余裕があれば自分でもう一度確認しておいてください。
■■ 編集後記 ■■
370条は、ほんとに試験によく出題されます。
ほとんどの問題は結論だけおさえておけば正解することができますが、さきほどの論理もしっかりと理解しておいてくださいね。
87条、242条と複雑に関連していますので、一度じっくりと考えてみてください。
何度も何度も考えていると理解できると思います。
それでは、次回もお楽しみに!!
発行:株式会社シグマデザイン
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(裏編集後記)
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