第151号 2006・4・1

■■ はじめに ■■

みなさん、こんにちわ。今日から4月です。

新年度を迎える会社が多いと思いますが、私も気持ちを入れ替えて頑張っていきたいと思っておりますので、みなさんもそれぞれ自分のフィールドで初心・基本に戻って、始めた時の志をもう一度思い出して頑張っていきましょう。

それでは、さっそくはじめましょう!!

▼▼▼ 第179条(混同) ▼▼▼

1項
同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

2項
所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

3項
前2項の規定は、占有権については、適用しない。

■■ 解説 ■■

前回は、179条1項本文の混同の原則論を解説しました。

今回は、179条1項但書きの例外の部分を解説します。

民法では、例外のない原則論はないといってもいいと以前にも言いましたが、この混同にも例外があります。

ただ、この例外は条文にきっちりと書いてありますので、そういう意味では楽です。

まず、原則ですが、同一人に所有権と他の物権が帰属した時は、その物権は消滅するのでしたよね。

そして、その趣旨は、必要のない権利を残しておいても意味がないからでした。

ということは、権利を残しておくことに意味がある場合に例外が認められるということです。

ということで、例外が規定されている但書きを読んでみると、「ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない」と書かれています。

この場合には、物権を残しておく意味があるのです。

言い方を変えれば、権利が消滅してしまうと不公平が生じるので、残しておかないとダメなのです。

例によって、これだけでは分かりにくいので、具体例をあげます。(地上権という言葉が出てきます。また、後ほど詳しく解説するのですが、簡単に言うと他人の土地を自由に利用することができる物権です。)

Aさんが、Bさんの甲土地に地上権を設定しました。

その後、Aさんは、Bさんの土地を買い取りました。

ただ、Aさんの地上権にはCさんの抵当権が設定されていました。

この事例の場合どうなるのでしょうか?まず、原則論です。

Aさんは、甲土地に対する地上権という物権を有しており、Bさんは甲土地に対して所有権を取得しているということからスタートします。

その後、Aさんは甲土地をBさんから買い取っているので、Aさんは、甲土地に対する地上権と所有権を有することになります。

とすると、ここで、Aさんは自分の甲土地に対して地上権を有しているという意味のない状態になりますので、179条1項の混同によって地上権が消滅します。

ここまでが原則論です。

しかし、ここで問題なのが、Aさんの地上権に対して、Cさんの抵当権が設定されていたということです。

抵当権というのは、土地や建物に対してだけでなく、物権の上にも成立するので注意してくださいね。

地上権という物権の上に抵当権を設定することもできるのです。

この場合、Aさんの地上権が消滅すると、Cさんの抵当権も消滅してしまいますよね。

分かりやすく言えば、Aという建物に抵当権が設定されている場合に、その建物が火事によって消滅すると抵当権が消滅するのと同じことです。

これは、非常にまずいことになるのです。

何がまずいかというと、Cさんが大損をしてしまうのです。

Cさんは、Aさんの地上権という物権に対して抵当権を有していたはずなのに、自分の関係のないところで起きた事情によって、その抵当権が消滅してしまうからです。

こんなことになってしまっては、Cさんは大損しますよね。

ですから、このような場合には、例外として混同は生じず抵当権は消滅しないのです。

一言でいえば、混同によって権利が消滅した場合、誰か損をする人がいる場合には、混同は生じないということです。

最後に、法律は条文の文言がとても大事ですので、179条1項但書きに、さきほどの具体例をあてはめてみます。

179条1項但書きは、「ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない」と書いてあります。

「又は当該他の物権」というのが、Aさんの地上権です。

そして、その地上権がCさんの抵当権という「第三者の権利の目的」になっているということです。

■■ 豆知識 ■■

特に豆知識はないのですが、混同が生じたり、例外によって混同が生じない場合というのはいろいろな場面がありますので、一度考えてみると勉強になると思います。

この混同は、法律系の資格試験にはよく出題されます。

苦手な方も多いと思いますが、どの権利と、どの権利が混同になるのか、そして、その権利が消滅することによって誰か損をする人がいるのか、という順番で考えると分かりやすいと思います。

■■ 編集後記 ■■

抵当権、地上権など、まだ説明していない言葉がたくさん出てきてますし、権利関係も複雑ですので、分かりにくいと思います。

また、バックナンバーを公開するときに、簡単な図を書いておきますので、よく分からなかった方は、その時にもう一度確認してみてください。

それでは、次回もお楽しみに!!

発行:株式会社シグマデザイン
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