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第316号 民法 第387条(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の効力)

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毎日3分!条文+豆知識で民法完全制覇! 第316号 387条 2008・3・21
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■■ はじめに ■■

みなさん、こんにちは。

今日は、少し難しい条文ですので、わからなくても特に気にする必要はありません。

あまり試験に出題されることもありませんので、概要だけ理解できれば十分だと思います。

ただ、司法書士試験では非常に重要な条文ですので、司法書士受験生の方は絶対に理解しておいてください。

それでは、さっそくはじめていきましょう。

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▼▼▼ 民法 第387条(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の効力) ▼▼▼

1項
登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意し、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権に対抗することができる。

2項
抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。

■■ 解説 ■■

まず、賃借権というのは、債権なのですが、不動産の賃借権の場合は例外として登記をすることができます。

詳しくは、605条で解説しますが、とりあえず不動産賃借権は債権であるが、登記をすることができるということを覚えておいてください。

そして、抵当権と賃借権の優劣は、登記の前後によって決することになります。

例えば、みなさんが、Aさんから甲土地を借りて生活していたとします。

みなさんは、甲土地に対して不動産賃借権の登記も具備していたとします。

ただ、その甲土地には、みなさんの不動産賃借権の登記に優先するBさんの抵当権が設定されていました。

1番にBさんの抵当権、2番にみなさんの不動産賃借権が設定されているという状態です。

この場合、みなさんの不動産賃借権は、1番抵当権者であるBさんの抵当権に対抗することができません。

もし、Bさんが抵当権を実行して、競売にかけ、甲土地をCさんが買い受けた場合、みなさんは、賃借権をCさんに対抗することができず、その土地から出ていかなくてはなりません。

今まで、生活していた所から出ていかなくてはならないというのは困りますよね。

このような不都合な事態を避けるために認められている制度が、この民法387条です。

民法387条は、賃借権の登記に優先する抵当権者全員の同意を得て、かつその同意の登記をした場合には、その同意をした抵当権者に対抗することができると規定しています。

さきほどの事例でいうと、Bさんの同意を得て、かつその同意の登記をすれば、たとえ、Bさんが抵当権を実行して、競売にかけ、甲土地をCさんが買い受けたとしても、賃借権をCさんに対抗することができます。

つまり、そのまま甲土地を賃借し続けることができるということです。

逆に言うと、土地を競売によって買い受けたCさんは、みなさんの賃借権という負担が付いた土地を取得するにすぎないということです。

土地を取得できるけれども、みなさんに対して土地を使わせ続けなければならないのです。

このように、387条は、不動産賃借人を保護するために認められた制度です。

それから、387条には2項があります。

抵当権者が同意をするには、その抵当権を目的とする者などの承諾を得なければならないと2項は規定しています。

例えば、さきほどの具体例でいうと、Bさんの抵当権に対してさらにDさんの転抵当権などが設定されていたような場合、Bさんが同意をするには、Dさんの承諾を得なければならないということです。

もし、Bさんが同意をする前であれば、Bさんの抵当権は、みなさんの賃借権に対抗できたはずであり、そのBさんの抵当権に転抵当を設定しているDさんも、みなさんの賃借権に対抗することができる抵当権を有していたことになります。

しかし、Bさんが同意をしてしまうと、Bさんの抵当権は、みなさんの賃借権に対抗することができなくなってしまいます。

要するに、抵当権の価値が下がってしまうわけです。

すると、その抵当権に転抵当を設定しているDさんは不利益を受けるわけです。

なぜなら、本来、みなさんの賃借権に対抗することができるはずの抵当権に転抵当を設定していたはずなのに、自分が知らない間に、みなさんの賃借権に対抗することができなくなっていたことになってしまうからです。

転抵当というのは、親亀の背中にのっかている小亀のようなイメージです。

2項は、抵当権者が同意をする場合は、それによって不利益を受ける可能性のある者の承諾を必要とすることで、抵当権を目的とする権利を有する者を保護しているのです。

■■ 豆知識 ■■

司法書士試験にはよく出題されているようなので豆知識を一つ紹介しておきます。

この民法387条の登記は、賃借人を登記権利者、当該賃借権に優先する総先順位抵当権者が登記義務者となって共同して申請します。

また、抵当権や賃借権への付記登記ではなく、主登記によってなされます。

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■ 編集後記 ■

今日の条文は、難しかったと思いますが、一度じっくりと考えてみてください。

なぜ、このような制度があるのか?

これをやることによって、利益を受ける人は誰か?不利益を受ける人は誰か?

ということを考えながら条文を読むと理解することができるはずです。

単に条文を読んだり、制度を覚えるのではなく、具体的な利益関係をイメージすると分かりやすいです。

それでは、次回もお楽しみに!!

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(裏編集後記)

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