第80号 2005・11・7

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。

今日は、101条の解説です。

しばらく、発行が滞っていましたが、また、再開したいと思います。

▼▼▼ 第101条(代理行為の瑕疵) ▼▼▼

1項
意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

2項
特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

■■ 解説 ■■

まず、101条は代理行為に瑕疵がある場合の条文なのですが、「瑕疵」を何と読むかわかるでしょうか。

これは、「かし」と読みます。法律の勉強をするときによく出てくる言葉なので、この機会に覚えてしまってください。

広辞苑によると意味は、きずや欠点という意味だそうです。

さて、1項から解説します。

代理の場合に法律行為をするのは代理人であるということは今まで解説してきました。

そして、詐欺や錯誤などがされ法律行為に瑕疵がある場合には、その契約は無効になったり、取消すことができるということも解説してきました。

その契約が無効になったり、取消すことができるような瑕疵があったかどうかは、代理人について判断しますよ、というのがこの101条1項です。

つまり、代理の場合、本人は代理人に任せて何もしないことが多いですよね。

実際に法律行為をするのは代理人なのです。

ですから、瑕疵があるかの判断も代理人を基準にしましょうということを規定しているのです。

では、例えば、本人Aさん、代理人Bさん、相手方Cさん、がいたとします。

そして、本人であるAさんは、代理人であるBさんに、Cさんから車を買ってくるように指図して代理権を与えたとします。

その時、CさんはBさんを詐欺して車を売っていたとします。

そして、この事情をAさんも知っていたとします。

この場合、本人であるAさんは契約を取消すことができるでしょうか。

さきほどの1項からすると、瑕疵があったかどうかは代理人を基準に判断するのでしたよね。

とすると、代理人であるBさんが、詐欺されているのですから、取消せそうにも思えます。

でも、これは取消すことはできないのです。これが、2項なのです。

どういうことかというと、AさんはBさんに、Cさんから車を買うように指示しています。

しかも、CさんがBさんに対して詐欺していることを知っているのです。

そんな事情を知っているんだったら、BさんにCさんから車を買うようなことを指示するなよ!っていう事になりますよね。

そんな事情を知っていながら、指示しておいて、後で取消すなんてことはおかしいですよね。

ですから、本人がそういう事情を知っていて、しかも代理人に対して指示を出していたようんな場合は取消すことができないということを2項は規定しているのです。

ここで、騙されたBさんがかわいそう、と思う方もいるかもしれません。

そう思った方はなかなか鋭いです。が、あと一歩です。

この場合、Bさんは全くかわいそうではないのです。

なぜなら、代理人というのは、本人のために法律行為をしているだけで、その契約の効果が自分に帰属することはないからです。

Bさんがした契約は、代理行為ですので、その車の売買契約はAC間で成立するだけで、Bさんにとっては何も関係ないのです。

ですから、詐欺されたBさんは、何らかわいそうではないので、問題はないということになります。

■■ 豆知識 ■■

さきほど、少し触れましたが、代理人が詐欺されたような場合で、契約が取消すことができる場合、その契約を取消すことができるのは、本人であって代理人ではありません。

なぜなら、取消すことのできる契約というものが、代理によって本人に帰属することになるからです。

これは、法律系の資格試験によく出題されるので、注意してください。

■■ 編集後記 ■■

代理、詐欺、強迫とか少しずつ今までのメルマガを読んでいることが前提の解説になってきました。

全てを説明していると、いつまでたっても先に進まないので、途中から購読をはじめていただいた方は、今までのバックナンバーを公開しているので、そちらを参考にしてください。

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