第376号 2017・12・20

■■ はじめに ■■

みなさん。こんにちは。

民法の大改正ですが、ちょっと前に施行日についての閣議決定がありました。

これで改正民法の施行日は2020年(平成32)の4月1日に決まりです。

多くの人が予想していた通りの結果になりましたね。

ということで、改正民法の効力が発生するのはまだ2年以上先のことなので、これから民法が出題科目になっている資格試験や公務員試験を受験する人もまだ当分は現行民法で勉強しましょう。
このメルマガも、当分の間は改正について少しは触れながらも基本的には現行民法で解説していきたいと思います。

さて、前回で不可分債権・不可分債務の解説が終わりました。

今回からは連帯債務についての解説です。

細かい条文の知識を覚えなければならない部分でちょっと大変ですが、頑張っていきましょう。

▼▼▼ 第432条(履行の請求) ▼▼▼

数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。

■■ 解説 ■■

432条は連帯債務の効力について規定した条文です。

ただ、連帯債務というものがどういう債務なのかについては何も書かれていません。

そこで、まず連帯債務について説明します。

連帯債務とは、複数人の債務者が、同一内容の給付について各自独立して全部給付すべき義務を負うが、複数の債務者のうちの一人が給付すれば全ての債務者の債務が消滅するような多数当事者の債務です。

連帯債務は債権の効力を強めるために用いられ、債権の担保的機能を果たします。

例えば、100万円の債権を有する債権者甲がいて、連帯債務者乙、丙、丁がいるとします。

この場合、乙、丙、丁はそれぞれ別箇に独立した100万円の債務を負うことになりますが、誰か1人が甲に100万円を弁済すれば乙、丙、丁全ての債務が消滅します。

甲からすると、乙、丙、丁のうち誰でもいいから、とにかくお金を持っていそうな人から回収することができるわけです。

単なる分割債務の場合、乙が無資力だった場合、他の丙、丁には何も請求することができませんよね。

こういう点で連帯債務は債権の担保的機能を果たしているわけです。

連帯債務が成立するためには、当事者の意思表示による場合と法律の規定による場合があります。
当事者が連帯債務にしようと決めたのであれば私的自治の原則(契約自由の原則)から当然認められます。

また、商法511条のように法律で連帯債務になると規定されている場合があります。

どちらかの要件を満たして連帯債務が成立した時に、どのような効果が発生するのかを規定しているのが432条です。

債権者は、連帯債務者の1人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができます。

先ほどの例で言えば、債権者甲は誰か1人に対して100万円全額支払えと請求してもいいし、一部の50万円を請求することもできます。

全員同時に全額100万円支払えと請求してもいいし、とりあえず一部の50万円だけ請求することもできます。

要するにどのような請求もできるということです。

もし誰かが100万円を弁済すれば、全ての債務者の債務が消えて終わりです。

一部の50万円だけ誰かが弁済すれば、50万円の債務が消滅し、残りの50万円が乙、丙、丁の連帯債務として残るということです。

連帯債務のポイントは、あくまで数個の別個独立の債務であるということです。

なので乙と丙で利息が異なっても、丁だけに保証人が付いているというようなことがあっても全く問題ありません。

ただ、注意しておいて欲しいのは、先ほどの例で言えば、債権者甲は乙から100万円、丙から100万円、丁から100万円の合計300万円受け取れる訳ではないということです。

100万円受け取ったら、その時点で全ての連帯債務者の債務が消滅します。

■■ 豆知識 ■■

改正民法では、連帯債務の規定の前に連帯債権という款が追加されたので、条文がズレています。
現行民法では不可分債権、不可分債務、連帯債務は条文があるのですが、あまり実用性がないということもあって連帯債権に関する条文がありませんでした。

実務では認められている概念だったのですが、それが条文で明文化されたということです。

今回解説した現行民法の432条は、改正民法では436条になっています。

内容も連帯債務の成立要件がより明確に規定されています。

参考までに条文を載せておきます。

【改正民法436条(連帯債務者に対する履行の請求)】
債務の目的が性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。

■■ 編集後記 ■■

今日の解説は条文の解説というよりは、主に連帯債務の内容についての解説でした。

これから1つずつ細かい条文を見ていくことになりますので、今回は連帯債務というのが何なのかという基本的なことだけ分かっていただければ十分です。

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それでは、次回もお楽しみに。

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