第352号 2012・5・29

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。今日で、415条の解説は終わりですので、頑張りましょう。

明治学院大が法科大学院を廃止することを決定したようです。

弱小法科大学院は、まだまだ淘汰されていくようです。

有力法科大学院は入試で英語が出題されますし、法科大学院をパスできる予備試験でも英語が出題されます。

法律家にとって英語は必須のスキルだということの表れだと思います。

20〜30年後には、世界人口は70億人を超えて、日本の人口は1億人を大きく切るらしいので、日本語というのは、世界で70人に1人以下の人間しか使わない言語ということになります。

さらに、日本は今の経済成長率を仮に維持できたとしても、20〜30年後にはGDPでインドネシアに抜かれて世界8位の国になる予想です。

今までも、日本語というのは世界的には日本人という小数民族の使う言語だったわけですが、世界第2位という圧倒的な経済力を有して、世界のGDPの大半を日本が占めていたことから何とか優位性を保っていました。

だからこそ、世界中の人が日本語を勉強して私たちに合わせてくれたわけです。

でも、これからは、少数民族かつ経済力のない日本語ということになってしまうわけですよ。

結果として、20〜30年後どうなるかは明白ですよね。

英語は、これから使えないとかなりまずいと思います。

行政書士なんかも、英語ができればいろいろと国籍がらみの案件で責めることができるので、ビッグチャンスだと思います。

高齢の行政書士の先生で英語ができる人は少ないでしょうから。

日本が世界での影響力を保つためには、全員が一致団結して頑張らないといけませんよね。

それでは、さっそくはじめましょう。

第415条(債務不履行による損害賠償)

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

■■ 解説 ■■

何度もお話していますが、債務不履行には以下の3種類があります。

1、履行遅滞

2、履行不能

3、不完全履行

履行遅滞と履行不能については既に解説したので、今回は不完全履行について解説します。

これで415条の解説は終わりですので、もう一踏ん張りです。

実は不完全履行は、履行遅滞と履行不能と同じ事ですので、解説もすぐに終わります。

まず、不完全履行に基づく損害賠償請求権の要件です。

1、不完全な履行があったこと

2、債務者の帰責性

3、不完全な履行が違法であること

4、損害の発生

5、因果関係

要件も2〜5までは、履行遅滞、履行不能と同じです。

違うのは1の「不完全な履行があったこと」だけです。

不完全履行という言葉からも想像できるように、一応の債務の履行はあったけど、その履行が不完全な場合を不完全履行といいます。

例えば、牧畜を営んでいる甲さんから乙さんが牛10頭を買いました。

その後、約束の期日に甲さんは牛10頭を乙さんに引き渡しました。

ここまでは何の問題もありません。

しかし、その引き渡された牛10頭のうち5頭が病気にかかっていました。

このような場合に不完全履行に基づく損害賠償請求が認められます。

一応、約束の期日に約束どおりの牛10頭を引き渡していますが、その牛が完全に健康な牛ではなく病気にかかった不完全な牛だったということです。

これらが不完全履行の要件になります。

次に効果ですが、これは簡単です。

さきほどの事例で、乙さんとしては、病気にかかっていた5頭を健康な5頭と交換して欲しいはずです。

もし、それが不可能ならば、その5頭について履行不能になります。

このように、後で完全な履行をすることを追完と言います。

民法の勉強をしているとよく出てくる言葉ですので覚えておいて下さい。

反対に追完が可能な場合には、5頭について履行遅滞となります。

甲さんは、単純に健康な牛5頭を弁済すればいいわけですから、弁済するまでの間、5頭について履行遅滞責任が発生します。

要するに不完全履行は、追完が不可能な場合は履行不能、追完が可能な場合は履行遅滞になるというだけの話です。

不完全履行は、履行遅滞と履行不能の一類型にすぎないということです。

■■ 豆知識 ■■

不完全履行に関して1つ論点があります。

いわゆる積極的債権侵害という論点です。

さきほどの牛の事例を使います。

甲さんが引き渡した5頭の牛は病気にかかっていました。

その病気が不幸にも伝染病であって、乙さんが元々飼っていた別の健康な牛100頭に伝染してしまったとします。

この場合、乙さんの100頭の牛が病気にかかったという損害を誰が負担するのか、その根拠は何かが問題となるのです。

少し難しいので簡単にだけ説明しますが、結論として損害は甲さんが負担することになります。

これは常識的に考えても納得していただけると思います。

問題は、その法律構成です。

まず、まだ解説していませんが、709条の不法行為というのが使えます。

709条は重要な条文なので709条の部分で解説します。

今は、709条の不法行為という言葉だけ覚えてしまって下さい。

条文の番号も覚えておく必要があります。

もう1つ考えられるのが債務不履行責任です。

さきほども申し上げましたように、引き渡された病気の牛5頭の損害については、追完の可否によって履行不能か履行遅滞に基づく損害賠償請求が認められます。

難しいのは、乙さんが元々飼っていた伝染してしまった牛100頭の損害(拡大損害)です。

甲さんと乙さんは、牛の売買契約をしています。

売買契約の売主の責任は、約束した目的物を引き渡すことです。

とすれば、引き渡した後で乙さんの牛に感染が広がった拡大損害は売買契約から発生する売主の債務とは何の関係もないようにも思えます。

しかし、契約関係にある当事者間では、契約の履行を通じて、相手方の生命・身体・財産に損害を与えないという保護義務が、信義則上(1条2項)認められると多くの学説は考えます。

やむを得ないので、最終手段である信義則を使うわけです。

さきほどの拡大損害の場合も、この信義則上の保護義務違反が認められるので、債務不履行に基づく損害賠償請求が可能になります。

したがって、乙さんは、不法行為に基づく損害賠償請求をしてもいいし、債務不履行に基づく損害賠償請求をしてもいいという事になります。

これを法律用語で不法行為責任と債務不履行責任は請求権競合になると言います。

不法行為と債務不履行では、要件・効果や立証責任が異なっていて、一般的には債務不履行責任を追求する方が原告としては楽だと考えられています。

■■ 編集後記 ■■

これで415条の解説は終わりです。

3回に渡った解説になりましたが、それだけ重要な条文だということですので、きちんと理解して覚えるべき部分は暗記して下さい。

履行遅滞、履行不能、不完全履行の要件・効果は全部覚えておきましょう。

それから、バックナンバーを公開しているサイトのメンテナンスがほとんど終わりましたので、見ることができます。

参考にして下さい。

https://www.mainiti3-back.com/

それでは、次回もお楽しみに。

発行:株式会社シグマデザイン
http://www.sigmadesign.co.jp/ja/

日本で実施されている資格を調べるには資格キングをご利用下さい。

なお、配信解除希望とのメールをいただくことがあるのですが当方では応じることができません。解除フォームよりご自身で解除していただきますようお願いいたします。

(裏編集後記)

受験生におすすめの在宅アルバイト。簡単な文章を入力するだけでお小遣い稼ぎができます。文章を書く訓練にもなって一石二鳥のお仕事です。

今、東京の某ホテルにいますが、夜中にけっこう大きな地震がありました。

地震は、ほんとに怖いですね。

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