第327号 396条 2008・11・14
■■ はじめに ■■
諸事情で、かなり長い間休んでしまいましたが、また再開したいと思います。
今日は、396条というちょうど区切りのよいところからの再開となります。
396条から抵当権が消滅する場合が規定されています。
それでは、さっそくはじめていきましょう。
▼▼▼ 第396条(抵当権の消滅時効)▼▼▼
抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
■■ 解説 ■■
さて、条文だけ読むとよくわからないと思います。
まず、この396条の趣旨は、被担保債権が消滅時効にかかっていないにもかかわらず抵当権だけが消滅時効にかかってしまうのを防ぐことです。
抵当権というのは、被担保債権を担保するために設定されるものでしたよね。
例えば、AさんがBさんに100万円を貸したとします。
その時、AさんはBさんのことが信用できないので、万が一のために備えてBさんの土地に抵当権を設定しました。
これだと万が一、Bさんが100万円を返さなかったとしてもAさんは抵当権を実行してそこからきっちりと100万円を回収することができるので安心です。
つまり、AさんがBさんに対して有している100万円の貸金債権と抵当権というのは別個の権利なのです。
貸金債権という債権と抵当権という物権の別個の2個の権利があるわけです。
ですから、形式的に考えれば、それぞれがバラバラに消滅時効によって消滅してしまうとも考えられるわけです。
しかし、そもそも抵当権は、被担保債権を確実に回収するために設定されたものであり、密接な関係がありますし、もし、被担保債権は残っているのに、抵当権だけ消滅していたということになれば、債権者であるAさんのような人は困りますよね。
100万円の貸金債権については、「請求」(147条1号)などをしていて時効が中断していたが、抵当権の時効は中断することなく20年が経過して消滅時効が完成してしまっていたということがあり得るわけです。
そこで、抵当権者の被担保債権は抵当権によって確実に回収することができるはずだ、という期待を保護するために396条は規定されているのです。
ちなみに、さきほど抵当権の消滅時効は20年と言いましたが、根拠は、167条2項です。
ただ、注意しなければならないのは、396条の反対解釈で、「債務者及び抵当権設定者」以外の者との関係では原則どおり、抵当権は被担保債権と離れて20年の消滅時効にかかります。
例えば、抵当不動産の第三取得者や後順位抵当権者です。
これらの者は、債務者や抵当権設定者と異なり、抵当権者と比べて保護する利益が大きいからです。
要するに、抵当権者の被担保債権を抵当権によって確実に回収したいという期待権と、抵当権の消滅時効を主張したい者の利益のバランスをどう取るのかという問題です。
■■ 豆知識 ■■
抵当不動産の第三取得者や後順位抵当権者は、消滅時効を主張することができると言いましたが、実はこれ自体が論点でしたよね。
145条の「当事者」をどう解するのかという論点です。
前回の145条の解説では、そこまで詳しく解説していなかったので、バックナンバーに判例の結論だけ追加しておきました。
時間があれば確認しておいてください。
■■ 編集後記 ■■
今日の条文は、177条や賃貸借についての知識も必要となりますので、難しかったと思います。
まだ、賃貸借の解説をしていないので、今はわからなくてもかまいません。
ただ、177条はすでに解説しているので、その部分でわからない方は復習をしておいてください。
それでは、次回もお楽しみに!!
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(裏編集後記)
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