第176号 2006・6・15

■■ はじめに ■■

みなさん、こんばんわ。今日は、民法199条の解説です。

今日は、占有の訴えの2つ目である占有保全の訴えの解説です。

▼▼▼ 第199条 (占有保全の訴え) ▼▼▼

占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。

■■ 解説 ■■

さて、どうでしょうか。

前回、解説した占有保持の訴えとの違いが分かるでしょうか。

前回解説した民法198条の占有保持の訴えはもう既になんらかの形で占有が妨害されている場合の規定です。

それに対して、民法199条の占有保全の訴えは、まだ占有が侵害されているわけではないけれども、占有が妨害される恐れのある場合に適用される条文です。

例えば、Aさんが甲土地を占有していました。

そして、その甲土地に隣接する乙土地に立っている大木が倒れそうになってきている場合を想像してみてください。

この場合、まだ大木が倒れてきているわけではないので、甲土地の占有が現実に妨害されてはいません。

しかし、大木が倒れそうになっているわけですから、何も言えないというのは、不都合ですよね。

そこで、このような場合に、「大木が倒れてこないように何らかの措置をしてくれ!」と言うことができるのです。

これが、占有保全の訴えです。

また、予防を請求するだけでなく、現実に倒れてきた場合には損害賠償を請求することになるわけですが、その損害賠償を請求する場合に備えて担保を提供するように請求することもできます。

■■ 豆知識 ■■

さきほど、妨害の予防措置を請求することもできるし、損害賠償の担保の提供を請求することもできると解説しました。

ただ、注意して欲しいのが、これらの請求は選択的にしか請求することができません。

つまり、妨害の予防措置を請求すれば、損害賠償の担保の提供を請求することはできないし、反対に損害賠償の担保の提供を請求すれば、妨害の予防措置を請求することはできません。

なぜなら、条文に「又は」と規定されているからです。

前回解説した、民法198条は「及び」と規定されていたので、両方まとめて請求することができます。

「又は」「及び」という細かい言葉ですが、全然意味が変わってきますので、条文を読むときは一言一句しっかりと読むくせをつけましょうね。

ちなみに、次回解説する占有の訴えの3つ目の類型である占有回収の訴えも「及び」となっています。

すなわち、占有の訴えの中で、選択的にしか請求できないのは、この民法199条の占有保全の訴えだけということになります。

■■ 編集後記 ■■

「及び」とか「又は」とか細かいと思われるかもしれませんが、絶対に軽視しないでくださいね。

一語が違うだけで全く文章の意味が変わってくることはよくあることですし、特に法律の条文は一言一句が極めて大事です。

せっかく、法律という究極の論理学のようなものを勉強しているわけですから、これからはどんな文章を読む時も一言一句を大切に読んでみてください。

そういう訓練を常にしておくと自然に論理的な思考力が身に付くと思います。

細かいし、難しいですが、頑張っていきましょう。

それから、法律の勉強は細かすぎると思われるかもしれませんが、それは当然です。

法律というのは、人の生命や財産、人生を左右するほんとうに重要なものですから、細かくてあたりまえなのです。

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